保釈が近いと思われていた日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)が一転、引き続き身柄を拘束されることになった。
ゴーン容疑者が最初に逮捕された有価証券報告書の虚偽記載容疑では、東京地検は2回に分けて逮捕し、検察側が求めていた勾留請求を東京地裁が却下していた。これを受け、東京地検特捜部は2018年12月21日、会社法の特別背任容疑でゴーン容疑者を再逮捕した。奇策ともいえる手法は国外メディアでも「きわめて異例」だと受け止められている。
「時効7年」なのに10年前の容疑で逮捕
東京地検特捜部は8年分の虚偽記載容疑を前半の5年と3年の2回に分けて逮捕し、前者で20日間、後者で10日間勾留。検察側は20日、再逮捕分の勾留期限の20日の勾留延長を請求したが、地裁が却下。裁判所が勾留延長を認めないのは異例だ。裁判所は実質的に1つの事件だと判断し、最初の20日間で取り調べを尽くすべきだったと判断したとみられる。
NHKなどによると、ゴーン容疑者が再逮捕された特別背任容疑では、自身の資産管理会社が金融派生商品取引に関する契約で多額の損失を出したため、2008年10月、約18億5000万円の損失を日産に付け替えたなどの疑いが持たれている。10年前の容疑だが、特別背任の時効は7年。ゴーン容疑者が国外にいる間は時効が停止するため、立件が可能だと判断したとみられる。
「自動車業界の巨人の努力は吹き飛ばされた」
この異例の動きは、海外メディアも相次いで報じている。CNNは、ゴーン容疑者が勾留請求却下で「小さな法的勝利」を得たため、クリスマス前に保釈される可能性があると伝えていたが、今回の再逮捕で2日間、裁判所が認めればさらに10日間に渡って身柄を拘束される、などと報じた。
BBCは、今回の再逮捕が「ゴーン容疑者が拘置所にとどまり、検察官がさらに取り調べできるようになったことを意味する」と指摘。大企業の幹部が拘置所で過ごすことに加えて、法的な「紆余曲折」があったことが「極めて異例」だとした。
AP通信は、検察が「新たな容疑を加えた」ことで「保釈への望みは打ち砕かれた」と報じた。日本では有罪率が99%以上あることを指摘しながら、背景を、
「業界の有名人の逮捕は国際的な関心を呼んだ。検察はゴーン容疑者と(同時に逮捕された前代表取締役の)ケリー容疑者をより長く勾留しようと、同じ容疑を2つの期間に区切る手法を用いたとして批判されていた。彼らはゴーン容疑者とケリー容疑者には国外逃亡の危険性があると主張している」
などと解説した。
ブルームバーグは、再逮捕は前日からの「大逆転」で、「自動車業界の巨人の努力は吹き飛ばされた」などと表現。検察側の狙いを
「より長く勾留することで、検察官はゴーン容疑者側の弁護活動開始を難しくすることができる」
と解説した上で、日本の検察は透明性の面などで批判を受けているとして、ゴーン容疑者は
「英国のテロ容疑者」に許されている期間(14日)よりも長く勾留されている、とする従来の解説を繰り返した。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)