金正恩・朝鮮労働党委員長を賛美する記事ばかりが載る、北朝鮮の労働新聞に、フランスの小中学校で「ケータイ禁止令」が出たことを紹介する珍しい記事が載った。
記事では、携帯電話を通じてわいせつな小説や動画などが拡散し、未成年者に「不健全な思想意識を注入」する結果になっていると指摘。フランスの対応に理解を示した。北朝鮮でも若者を中心にスマートフォンの利用が増えており、当局が神経をとがらせていることがうかがえる。
携帯電話で「各種の退廃的反動的な思想・文化」が流布
フランスではマクロン大統領が大統領選の公約で携帯禁止の法制化を掲げており、2018年9月、国内の幼稚園、小中学校で子どもたちによる携帯電話の使用を禁じる法律が施行された。
このことを、労働新聞は12月18日に「注目される校内での携帯電話利用禁止措置」と題した記事で紹介。法律は「携帯電話が学生に与える負の後遺症」を理由に制定されたとして、
「学生の携帯電話の使用が校内秩序と授業規律を乱すとして、多くの国では頭を抱えている」
などとフランス以外でも問題が起きているとした。さらに、携帯電話の害悪を長々と主張した。
「より深刻なのは好色な文章や小説、動画と暴力的な内容の電子娯楽が携帯電話を介して無制限に伝播されていることだ。これは携帯電話が未成年の学生に不健全な思想意識を注入するための手段としても利用されていることを物語っている。携帯電話を介して流布されている各種の退廃的反動的な思想・文化が、学生の人生観や価値観の形成に混乱をもたらす、というのが世界の大多数の教員と父兄たちの見解だ」
さらに、フランスの対応は「携帯電話が学生に与えるマイナスの影響を減らすための措置の一環」だとして、理解を示した。
国際電話やインターネット接続はできない
携帯電話は北朝鮮でも普及が進んでいる。国際電気通信連合(ITU)の統計によると、16年時点での携帯電話契約者数は約360万人。人口100人あたり14.1人いる計算だ。さらに、韓国の研究機関、「情報通信政策研究院」が17年に発表した報告書「北朝鮮の有・無線通信サービスの現状および示唆点」によると、北朝鮮では、「アリラン」など、アンドロイドをベースにしたスマホ19機種が発売されており、平壌地域では20〜30代の若い層と商人にとっては「必需品」。音声通話以外にも、ビデオ通話や写真送信の機能があり、地図、料理のレシピ、電子家計簿、労働新聞ビューワーなどが使える。ただ、国際電話やインターネットへの接続はできない。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)