阪神は2018年12月17日、中日を自由契約になったオネルキ・ガルシア投手(29)の獲得を発表した。年俸1億7000万円の単年契約と見られるが、ガルシアの阪神移籍を巡ってファンの間からは歓喜の声とともに「なぜ阪神に?」との声が上がっている。J-CASTニュースは、ガルシアが阪神移籍を決めた理由を外国人選手の事情に精通している元メジャー球団関係者に話を聞いた。
外国人選手は移籍に関しては基本的に代理人を通してすべてを決定する。選手自身の希望を代理人に伝え、代理人が球団と交渉を行う。代理人によっては、球団との駆け引きの際に選手が希望する年俸よりも高めの条件を提示する者もいるというが、一般的には選手の希望額と誤差は生じないという。
重要視されるのは「年俸」と「起用法」
関係者によると、代理人と球団との交渉において重要視されるのが、「年俸」と「起用法」だという。その選手に家族がいれば、これに日本における生活環境面などの条件が加わる。ただ、この条件の中で最も重視されるのが当然のことながら「年俸」で、代理人は球団と激しい攻防を繰り広げる。
阪神ファンの最大の「謎」は、なぜガルシアが中日よりも年俸が低いとされる阪神に移籍したのかだ。今オフ、中日はガルシア残留のために2年2億円の条件を提示したが、ガルシアの代理人は3年以上の年俸2億円超を要求したとされる。中日はマネーゲームを避け、ガルシアの残留を断念して自由契約となった。
今回、阪神が提示した条件は、年俸1億7000万円の単年契約で、これに出来高などの条件が付帯されているとみられる。これに関して関係者は「通常、代理人が球団と交渉する場合、出来高による付帯条件よりも基本ベースを重視する。いかに付帯条件が良いものでも、年俸の低い球団を選択することは考えられない」と断言する。
前出の関係者は、「ガルシアの起用法について、中日と意見の相違はなかったはず」と話す一方で、「ガルシアが中日の外国人選手の仲間内で浮いてしまっていた可能性はある。中日はドミニカ出身の選手が多く、ガルシア同様にスペイン語を話す選手が多い。ただ、ガルシアが仲間内で問題を起こしたという話は聞いたことがないので、これも考えにくい」と話した。
ガルシアサイドから阪神に売り込みが...
入団の経緯に関して谷本修球団本部長は、ガルシアサイドから売り込みがあったことを明かしており、左の先発の補強という阪神の補強ポイントと合致したための獲得となった。ただ、ガルシアサイドが要求した条件の詳細は明らかになっておらず、ファンの間で様々な憶測が飛び交っている。
前出の関係者によると、ガルシアが単年契約であることから2020年シーズンのメジャー復帰を目論んでいる可能性もあるという。中日と交渉が決裂し、一度はメジャー復帰の道を探ったが、どの球団からも声がかからなかったため、興味を示していた阪神に売り込んできたというもので、これが最も現実的な理由だという。
今季、メジャーに復帰してリーグトップタイの18勝をマークしたマイルズ・マイコラス投手(30)のように、メジャー関係者の間では日本球界で結果を残した選手に注目が集まっている。ガルシアサイドもこのマイコラス効果にあやかって複数のメジャー球団に売り込んだと見られるが、結果、合意には至らなかったようである。
ガルシアは今季、27試合に登板して13勝9敗、防御率2.99の成績を残したが、メジャー関係者の間ではガルシアの実力は未知数との位置付けだという。マイコラスは日本球界で3年間、ローテンションの一角として実績を残した。一方のガルシアは日本球界での経験はわずか1年間のみ。これに加えメジャーでの実績がほとんどないことからメジャー球団が獲得を見送った可能性が高い。
当初、ガルシアは中日の残留を希望しており、球団と「相思相愛」と見られていたが、代理人による条件の引き上げで交渉が決裂。これに続いてメジャー復帰もならなかったことから、前出の関係者は「代理人の見通しが甘かった」と指摘し、「あれだけよくしてもらった中日を裏切るような形で去って行ったので、日本球界に見切りをつけたと思っていた。まさか戻ってくるとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。
関係者の話を総合すると、ガルシアの阪神移籍の大きな要因として代理人の見通しの甘さがあげられるが、真相のほどは不明である。ただ、球団、阪神ファンにとっては心強い助っ人左腕であることは確かで、来季の先発の柱として期待が高まるばかり。球団を通じて「甲子園の大観衆の前での登板を楽しみにしています」とコメントしたガルシア。来年1月末に再来日し、2月1日からチームに合流する予定だ。