YouTubeで人気の「テキスト動画」 全文引用横行で弁護士「著作権法違反の可能性」

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   報道媒体の記事を引用して、映画のスタッフロールのように流す「テキスト動画」。YouTube(ユーチューブ)では人気のジャンルで、再生回数が急増している「急上昇」欄にたびたび掲載されている。

   ユーチューブでは著作権侵害に当たる投稿は禁止しているが、記事を全文"引用"したテキスト動画も少なくなく、「グレーゾーン」となっている。

  • 実際に投稿されたテキスト動画
    実際に投稿されたテキスト動画
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「マツコ引退」動画は160万再生

   「マツコ・デラックスが突然の芸能界引退宣言..."本当の理由"に涙が止まらない...業界騒然のアノ人との関係が判明!!」「紀平梨花と本田真凜を比較した渡部絵美の発言がエグイ!ポスト浅田真央争いのゆくえはどうなる?」――。いずれも、急上昇欄に載ったテキスト動画だ。

   インパクトが強く、思わずクリックしたくなるようなタイトルが特徴で、テキスト動画を専門に配信する投稿者も多い。

   2018年12月7日に投稿された「マツコ・デラックス~」の動画は、週刊実話(12月13日号)の記事「バラエティー界が慌てふためくマツコ・デラックスの芸能界引退説」と、SmartFLASH(光文社)の「マツコ、運転手が欲しくて会社を設立していた」(11月29日配信)を組み合わせた内容。ナレーションはなく、ピアノ曲をBGMに、文字が下から上に流れる構成だ。

   ほぼ全文を語尾を変えてコピーし、動画の大半は引用部分で占める。引用元は明記されていない。タイトルで「引退宣言」と言い切っているが、実際はただの憶測だ。12月17日現在で約160万再生を記録する。

   J-CASTニュースで配信した記事「森田童子さん死去、素顔は謎のまま 『ぼくたちの失敗』大ヒット」(6月12日配信)をもとにしたテキスト動画も見つかった。本文を全文引用し、最後に「(動画について)ご意見ご感想をお待ちしています!」「日々更新していますので、職場の誰よりも芸の情報に長けた人になれますよ!」とのテロップが流れていた。

テキスト動画の制作指導ブログも

   インターネットで「テキスト動画」と検索すると、「誰でも簡単に作れる」「短時間で稼げる」との売り文句で、制作を指南するブログが多数ヒットする。ユーチューブでは、審査が通れば誰でも動画に広告を載せられ、視聴数に応じて収益が得られる。

   あるブログでは、素材となる記事と画像は「Yahoo!ニュース」から選び、本文を若干変更した上で無料の動画制作ツールで作ることを勧めている。

   ユーチューブの規定では、著作権侵害に該当する動画の投稿は認めておらず、アカウント停止などの措置を取るとしている。

   テキスト動画のように、「第三者のコンテンツを寄せ集めただけの、ナレーションなしの動画」「他のコンテンツを自動で処理、合成、組み合わせて生成されたコンテンツ」は、広告掲載できないという。

   しかし、規約違反とみられる動画は複数確認でき、"野放し"状態となっている。J-CASTニュースでは12月中旬、ユーチューブを運営するグーグル日本法人にチェック体制などを尋ねたが回答はなかった。

弁護士「自身の文章がほとんどないと『引用』ではない」

   アディーレ法律事務所の長井健一弁護士は、取材に「テキストのほとんどが引用で、自分の文章がほとんどないような場合には、『引用』にあたりません。引用元の記載がないような場合も、著作権法違反となります」と話す。

   引用のルールは著作権法で定められており、

「引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」

などとある。

   長井弁護士によれば、

(1)引用する側の著作物と引用される側の著作物とが明瞭に区別して認識できる

(2)引用する側の著作物が「主」で、引用される側の著作物が「従」といえる

――の2点も必須で、J-CASTニュースの記事「森田童子さん~」を転載した動画は、

「ほとんどが引用であり、最後のわずかな部分のみ自己の文章となっています。この場合、主従関係がなく、そもそも『引用』にあたらないので、著作権法違反となります」

   ユーチューブの投稿をめぐっては、小学館が発行する人気漫画のページやセリフを転載した「ネタバレ動画」が著作権侵害に当たるとして、東京地裁は18年11月、米ユーチューブ社に対し、投稿者の発信者情報を開示するよう命じる仮処分を決定した。

   テキスト動画についてはどうか。長井弁護士は、

「文字だけでも開示請求が認められるかは、今後の裁判例の集積を待つことになります」

と説明する。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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