読売新聞が25年ぶりの本体価格値上げとウェブサイトのリニューアルを発表したことで、大手全国紙の有料版をめぐる戦略が大筋で出そろった。最初に有料の電子版を創刊した日経新聞をはじめとする多くの新聞社が、紙媒体を購読しない「電子版のみ」のプランを用意するなか、読売新聞は、こうしたプランを用意してこなかった。
リニューアル後の料金プランは現時点では明らかではないが、「ご購読料金のみで、すべてのコンテンツ、サービスがご利用いただけます」とうたっており、引き続き紙媒体購読を前提にサービスを展開する可能性が高そうだ。
日経は有料会員「20代、女性」強調
読売は値上げと合わせて、同社のニュースサイト「ヨミウリ・オンライン」と有料会員制サイト「読売プレミアム」を統合し、読者が追加料金なしで利用できる「読売新聞オンライン」を2月に開設する。
前身の「読売プレミアム」は12年5月にスタート。紙面に載った記事が読めたり、過去1年分の記事が検索できたりするサービスだ。定期購読者は月額150円支払うと利用できるが、紙媒体は読まずに「読売プレミアム」だけ読むプランは用意されなかった。新たに立ち上がる「読売新聞オンライン」をPRするウェブサイトには
「読者のみなさまは、読売新聞ご購読料金のみで、すべてのコンテンツ、サービスがご利用いただけます」
とあり、引き続き「電子版のみ」のプランが用意されない可能性もある。
日経新聞は電子版を10年3月に創刊。18年6月の発表によると、無料会員を含めると登録会員は400万人を超え、そのうち有料会員は60万人を占める。有料会員には、紙媒体に1000円プラスするプランと、4200円支払って電子版だけを読むプランがある。有料会員の内訳は不明だが、6月7日の日経記事では、
「2010年3月の創刊以降、30~50代のビジネスパーソンが中心だった有料会員層は20代、女性へ広がっています」
などと購読者層の広がりを強調している。紙媒体では読者の高齢化が進み、若年層で新聞を読み始める人はきわめて少ないため、部数は「右肩下がり」。電子版で購読者層が広がったことは、新聞業界にとっては朗報だと言えそうだ。
朝日新聞は11年5月に有料化。日経同様に、紙媒体に1000円プラスすれば有料記事が読めるほか、紙媒体の読者以外にも有料記事が300本読める月額980円のコースと、読み放題の3800円の有料プランがある。朝日新聞の18年6月の有価証券報告書によると、登録会員数は有料・無料合わせて約326万人。会員数を公表しているのは日経・朝日の2社のみだ。
産経は紙媒体との「併読プラン」なし
最も読売と対照的なのが産経だ。産経は16年12月から「産経電子版」という現在の形で有料サービスを展開。月額1800円で紙面掲載の記事が読めるが、紙媒体を購読することによる割引はない。
毎日は15年6月に電子版をスタート。紙媒体の定期購読者は追加料金なしで電子版の有料記事を読むことができ、500円を追加すれば記事データベースが使えたり、サンデー毎日などが読めたりする「プレミアムプラン」に加入できる。電子版だけを読むプランも、24時間で100円、1か月で980円のプラン、1か月3200円のプレミアムプランと幅広い。