人口増と「修羅の国」は切り分けて
―― 人口が増えることに対する懸念の二つ目が、治安の問題です。18年度の「福岡市制に関する意識調査」では「福岡市は『住みやすい』と答えた人が97.1%で、3年連続で過去最高を記録していますが、この調査では「市民のマナー」「犯罪の少なさ」に課題あり、とする声も多いです。福岡県のことを「修羅の国」と呼ぶ向きもあります。このまま人口が増えても大丈夫なのでしょうか。
高島: その通りなのですが、切り分けて考えることが大事です。天神ビッグバンが動き出す前は、マナーは良かったんですか?自転車や車の運転マナーなどは昔から良くないですよね。そこと再開発や人が増えてくることは変わりなくて、むしろ外から入ってきた人は福岡の運転のマナーの悪さを驚いているかもしれないですよね。そもそもの住んでる人たちの「もうよかろうもん」という気質も変えていかなくてはいけません。一方で、入管法が変わってきて外国人労働者が一気に入ってくるとなると、福岡だけではなく、国全体として常識の元々のベースが違うところが調和するまでには時間がかかるだろうと思います。質問とは別件にはなりますが、入管という「ゲート開け閉め」だけの話ではなく、共生に向けた施策も必要です。今では地方やNPOに投げっぱなしで、国は責任を持っていません。このまま国として予算や施策などの手を打たないとなると、相当混乱が起きると思います。
―― これまでに何回か出ている「交流人口」という観点では、移住する人以外に観光客を増やすことも重要だと思います。ですが、このあたりで観光地としてポピュラーな太宰府天満宮は太宰府市ですし、福岡市には観光資源が乏しい、という声もあります。市長はどんな観光地をお勧めしますか。
高島: もちろん博多は食がおいしいので、夜の観光が中心になってくるかと思います。一方で、福岡市だけにとどまらなくてもいいと思っていて、太宰府(太宰府市)や宗像大社(宗像市)に足を伸ばすというのもありです。ただ一方で、福岡に何もないわけではなく、それこそ京都より長い2000年の歴史があります。お茶や饅頭、そば、うどん、ういろう...、こういうものの発祥の地が福岡で、その記念碑があったり、それにまつわるお寺や神社があります。龍宮寺というお寺には、13世紀に現在の博多港で捉えられた人魚の骨だとされるものまであります。こう、すごい宝物があるのに、福岡の人自身、あまりそういうことを意識していません。「博多」にあたるエリアにはこういったスポットは多いのですが、それが「点」にしかなっておらず、「線」として、ストーリーとして展開できていません。ストリートをつないで街並みを「面」として展開することが必要です。道をつくるのは行政の仕事なので、道を石畳風に変えていくことで、近隣の民家も改築のタイミングに合わせて、街並みや、景観をそろえていければいいと考えています。時間かかりますが、「旧市街」として熟成するだけの宝はすでにあると思っています。