「JR東、独自にポイント還元 エキナカなど増税時検討 中小に対抗」――2018年12月5日、毎日新聞の朝刊にこんな記事が載った。
背景には、2019年10月に消費税率が10%に引き上げられることがある。政府は消費者が中小店舗でクレジットカードなどを使って買い物した場合に限り、代金の5%をポイントとして還元する仕組みを検討している。ところが政府が国費を投じて行なうポイント還元は中小企業のみを対象とする。
そこで対策を迫られているのが、大手企業である。
バランス欠く政府策に右往左往
そんな中、大手企業でいち早くポイント還元の検討を表明したのが上記のJR東日本だ。同社の深沢祐二社長は12月4日の記者会見で「政府の意向が正式に決まったという話は聞いていないが、私どものSuica(スイカ)の中にポイントがあり、還元していくことになるだろう」と述べ、政府の増税対策に合わせ独自のポイント還元を検討する考えを示した。
この発言がライバルの大手企業に与える影響は大きい。
安倍政権は前回の消費増税で消費が落ち込んだことを教訓に、次回は期間限定で増税対策を行なうことを検討している。その一つが中小企業の店舗でキャッシュレス決済した場合に限り、国費で5%分を消費者に還元するという案だ。コンビニエンスストアなどが対象となるが、同じコンビニでも個人経営のフランチャイズ店は中小店舗の扱いでポイント還元されるのに対し、直営店は大企業扱いとなるため、国費では還元されないなど、現行の政府案はバランスを欠いている。
コンビニも「独自ポイント」付与か
同じ看板のコンビニでも店舗によって差が出るのは混乱を招くため、個人経営のフランチャイズ店以外の直営店については大手コンビニが独自でポイントを付けざるをえないだろうという見方が関係者の間では有力だ。
今回のJR東の深沢社長の発言は「検討段階」とはいえ、消費税対策で独自にポイント還元を行なう考えを表明したことになり、大手企業では初めてだ。JR東関係者によると、ポイント還元はファッションビルの「ルミネ」や「エキナカ」店舗など、JR東グループの商業施設が対象となる。決済機能のあるスイカ以外のクレジットカードを使った場合もポイントを付けるかどうかなどは今後検討する。深沢社長は「具体的にどんな方法がとれるのか、システム的な問題も含めて現在、検討している」と述べた。
JR東がポイント還元の検討を表明したことで、セブンイレブンやイオンなど他の大手流通の対応が注目される。安倍政権は当初、還元率を増税分の2%とする考えだったが、増税後の消費落ち込みを防ぐため5%に引き上げ、2019年10月から20年6月までの9カ月間、ポイント還元を実施する方向に軌道修正した。中小企業のポイント還元に充てる国費は4000億円規模とみられ、これを呼び水に多くの大手企業がポイント還元を導入せざるを得なくなるとみられている。果たして、ポイント還元という消費増税対策が本当に必要かどうかを含め、今後、国会などで議論を呼ぶのは間違いない。