立憲民主党の公式ツイッターアカウントが2018年12月12日夜、ネット上の記事を紹介したツイートが「不適切」だったとして謝罪した。その理由は、ツイートで紹介した記事の表現が「公式で扱うには不適切ではないかというご指摘」があったためだとしている。
どういった点が「不適切」かは明示されていないが、漫画家の小林よしのり氏の事務所から抗議を受けたことが背景にあるとみられる。
「公式アカウントは様々な論説を紹介する方針で運営しています」
立憲民主党がツイートで紹介していたのは、ニュースサイト「現代ビジネス」が11月29日に配信した、文筆家の古谷経衡氏による「ネットを徘徊する怪物『差別的デマ』は、いま誰を餌食にしているのか」と題した記事。ネット右翼の変遷を解説した論考で、「アイヌ特権」「沖縄デマ」「在日特権」などについて取り上げる内容だ。
立憲民主党のアカウントは11月末に記事を紹介し、福山哲郎幹事長もリツイートしていた。それから半月近くが経った12月12日になって、党のアカウントが
「現在論争中の案件について、不適切なツイートを行なったとの認識に至りました」
としてツイートを削除したことを明らかにし、
「公式アカウントは様々な論説を紹介する方針で運営しています。とりわけ差別問題は多角的に考えるべき喫緊の課題だと認識しておりツイートさせて頂きました。しかし後日、記事の表現が公式で扱うには不適切ではないかというご指摘を頂きました。関係者含めご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします」
などと経緯を説明した。どの表現が「不適切」だったかは明らかにしていないが、アイヌ民族に関する記述が問題になったとみられる。
小林氏「もうすでにわしに関する『デマ』は拡散された」
古谷氏の記事によると、「アイヌ特権」は、アイヌ民族が「被害者としての立場を利用して、様々なアファーマティブアクション(弱者集団への優遇措置)を享受している」とする主張で、「この運動の最前衛に立ったのは、漫画家の小林よしのりであった」と説明していた。
この記述に小林氏側が反発。小林氏の事務所は12月8日のブログ記事で、同日付で
「小林がアイヌについて著作を行ったのは2008年から09年にかけてで、しかもその内容にヘイトを煽るような要素もなく、2014~15年頃のヘイト運動の『最前線に立った』などという事実は一切ありません」
などとして、ツイートについて抗議し、経緯の説明などを求めるメールを立憲民主党に送ったことを明らかにしていた。
立憲民主党の対応については、小林氏は12月13日朝更新のブログ記事で、
「小林よしのりに関する箇所が『デマ』だったからという原因を示してないので、何のことやら分からないだろう。もうすでにわしに関する『デマ』は拡散された」
と反応。雑誌「SPA!」の連載「ゴーマニズム宣言」で、この問題を取り上げることを明かした。
その後のスタッフによる書き込みでは、立憲民主党側から謝罪のメールが届いたことが明かされた。何に対して謝罪したかがはっきりしないツイートの表現には不満を残しつつも、
「今回ツイートを削除して謝罪したことは、結果的には立憲民主党にとってはいいことだったと思います」
としている。
小林氏は10月末に「立憲民主党の左翼化の防波堤になる、立憲的改憲を訴える『もうひとつの立憲フェス』」を主催するなど、立憲民主党、とりわけ同党所属の山尾志桜里衆院議員らが唱える「立憲的改憲」論を支持していることで知られている。
古谷氏の反応は...
一方で、小林氏は14年9月のウェブマガジン「小林よしのりライジング」の記事で、札幌市議(当時)の金子快之(やすゆき)氏が
「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね。せいぜいアイヌ系日本人が良いところですが、利権を行使しまくっているこの不合理。納税者に説明できません」
とツイートして批判を受けた問題について、
「『アイヌ民族は出て行け』とか、『汚いアイヌめ』とか、差別的な罵詈雑言を浴びせればヘイトスピーチだろうが、アイヌがいるかいないかは議論の問題である。ヘイトスピーチとは何の関係もない」
と論評している。なお古谷氏は、この経緯について
「小林がこの市議の発言を擁護したのは事実であり、古谷経衡の主張は正しい。小林はアイヌヘイトの雛形の製造責任もあり、だからこその擁護だ」
などと主張するツイートを12月13日にリツイートしている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)