京王電鉄が、このところ調子がいい。調子がいいというのは、つまりは株価の話だ。
2018年12月3日には6390円をつけ、1990年3月以来、約28年ぶりの高値を記録。その後も堅調に推移している。ライバルの小田急電鉄に乗客があまり流れず、業績も良好なことなどから、有望な内需株として買いが入っているようだ。
上半期の決算は過去最高に
まずは足元の株価を下支えしている2018年9月期中間連結決算(11月5日発表)を確認しておこう。純利益が前年同期比3.2%増の151億円となり、上半期として過去最高を更新した。売上高にあたる営業収益は4.2%増の2176億円、営業利益は4.1%増の236億円だった。
主力の運輸業は、雇用情勢の改善や沿線人口の増加などにより、輸送人員が0.9%増加した。3月に相模原線の運賃を一部引き下げたことで旅客運輸収入は0.7%減(うち定期0.1%増、定期外1.4%減)となったものの、2月に運行開始した「京王ライナー」の座席指定料金収入の増加などにより、鉄道事業の営業収益合計は0.2%減にとどまった。高速バスの利用者増でバス事業は増収。これらの結果、運輸業全体の営業収益は0.6%増の665億円だった。営業利益は減価償却費がかさんだことなどから2.9%減の105億円。
運輸業以外では流通、不動産、レジャー・サービスがいずれも増収・営業増益。なかでもインバウンド売り上げが堅調な流通の営業利益が47.6%増の24億円。前年度にホテル「京王プレッソイン」が2店舗(東京駅八重洲、浜松町)開業したほか、「京王プラザホテル」の客室単価が向上したレジャー・サービスの営業利益が9.1%増の42億円と好調だった。
「快適性」だけでは客は動かない?
ただ、その他部門は、建築・土木事業における完成工期の期ずれによって減収・営業減益となった。上半期の営業利益は会社計画(240億円)に対して若干下ぶれしたのはこの建築・土木事業が影響したためで、SMBC日興証券は「通期計画(営業利益395億円)に沿った進捗とみられる」と指摘した。
この中間決算発表後、京王電鉄の株価は5連騰を演じ、市場の歓迎ぶりを印象づけるものとなった。こうした中で、野村証券は11月7日のリポートで目標株価を5200円から5800円に引き上げた。投資判断は3段階で真ん中の「ニュートラル(中立)」を維持。目標株価引き上げの理由について、他社より低い営業利益率を向上させる意思を中期計画で示したことを挙げる。従来より高料金設定のホテルを京都、札幌で順次開業するほか、岐阜県高山市でもホテルの建設が決定していることによるホテル事業拡大も高く評価した。
一方、小田急電鉄の動向も京王電鉄には好材料だ。3月に完成した複々線化により、ラッシュ時(午前8~9時)の列車を9本増発し、新ダイヤ前に192%だった平均混雑率を151%にまで引き下げ、通勤の快適性を上げた。しかし、それを見て路線を変えようという乗客があまりいなかったようだ。それは2018年9月中間決算において京王の輸送人員が増えていることにも表れている。快適性だけでは乗客は動かないのかもしれない。
こうした状況が京王電鉄株を買う際の安心感にもつながり、28年ぶり高値実現に結びついた。足元で株式市場は全体として軟調だが、これは米中貿易戦争の懸念など海外の材料が大きい。それだけに安定した内需株である京王電鉄株の人気は続くとの見方が強い。