「快適性」だけでは客は動かない?
ただ、その他部門は、建築・土木事業における完成工期の期ずれによって減収・営業減益となった。上半期の営業利益は会社計画(240億円)に対して若干下ぶれしたのはこの建築・土木事業が影響したためで、SMBC日興証券は「通期計画(営業利益395億円)に沿った進捗とみられる」と指摘した。
この中間決算発表後、京王電鉄の株価は5連騰を演じ、市場の歓迎ぶりを印象づけるものとなった。こうした中で、野村証券は11月7日のリポートで目標株価を5200円から5800円に引き上げた。投資判断は3段階で真ん中の「ニュートラル(中立)」を維持。目標株価引き上げの理由について、他社より低い営業利益率を向上させる意思を中期計画で示したことを挙げる。従来より高料金設定のホテルを京都、札幌で順次開業するほか、岐阜県高山市でもホテルの建設が決定していることによるホテル事業拡大も高く評価した。
一方、小田急電鉄の動向も京王電鉄には好材料だ。3月に完成した複々線化により、ラッシュ時(午前8~9時)の列車を9本増発し、新ダイヤ前に192%だった平均混雑率を151%にまで引き下げ、通勤の快適性を上げた。しかし、それを見て路線を変えようという乗客があまりいなかったようだ。それは2018年9月中間決算において京王の輸送人員が増えていることにも表れている。快適性だけでは乗客は動かないのかもしれない。
こうした状況が京王電鉄株を買う際の安心感にもつながり、28年ぶり高値実現に結びついた。足元で株式市場は全体として軟調だが、これは米中貿易戦争の懸念など海外の材料が大きい。それだけに安定した内需株である京王電鉄株の人気は続くとの見方が強い。