将来のノーベル賞候補が......
1963年生まれの張教授は、15歳で上海の名門、復旦大学物理系に入学した天才児だった。大学2年でドイツに留学し、その後米国で物理学博士号を取得。32歳で早くもスタンフォードの物理学終身教授の地位に。トポロジカル絶縁体と量子スピンホール効果で画期的な成果をあげ、将来のノーベル賞受賞の有力候補と目されていた。
1999年には、理科系の最高峰、清華大学(北京)高等研究院の招へい教授となった後は、中国の名門大学、企業、政府との関係は非常に緊密となり、中国の半導体産業発展のために、学術的観点から重要なアドバイスを続けていたとされる。
それが、特に兆候がなかったのに、突然の自殺。それは、5G時代に向けて一層の技術革新が必要な半導体分野での貴重な頭脳を、中国が失ったことを意味する。このため、中国のネット界は孟氏逮捕と張氏自殺とを、米国の「陰謀論」で結びつけて語る論調が花盛りとなったのだ。
トランプ大統領は、今年8月、政府などと取引する企業にファーウェイなどの機器利用を禁じる国防権限法を成立させた。それ以前にも4月には通信機器大手、中興通訊(ZTE)に、米企業との取引を禁じる制裁を科し、事業を続けられなくした。中国封じ込めといえる流れが続いた年の終わりの、慌ただしい動き。中国のネット上で、「陰謀論」が収まる気配は見えない。
(在北京ジャーナリスト 陳言)