保阪正康の「不可視の視点」
明治維新150年でふり返る近代日本(23)
戦争末期に露呈した「先達への非礼」

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15-6歳の少年が爆弾をリュックに詰めて...

   昭和20年6月に義勇兵役法ができ、具体的に本土決戦第2号 、第3号と続く作戦は、いわば「一億総特攻」なのだが、男性の15歳から60歳、女性の17歳から40歳までは陸軍の名簿に登録され、いつでも「義勇兵」という名の特攻隊員に徴用されることになっていた。

   まさに15-6歳の少年が爆弾をリュックに詰めて、本土に上陸したアメリカの戦車に体当たりしていくというのであった。こんな戦争を行うというのは、この国の文化や伝統に背反する無礼な態度だと思うが、しかしそういう正常な判断はすでにできない状態になっていたのである

   こうした頽廃は軍事が政治の上位にあって生まれた異様さであった。戦争末期になって露呈してきた異様さは、この国の文化や伝統を形成してきた先達へのまさに非礼な態度だといってもよかった。この視点こそ、不可視の領域のことなのだが 、これを理解せずに戦争終結へのプロセスを見つめたところで本質はわからないというべきであった。(第24回に続く)




プロフィール
保阪正康(ほさか・まさやす)
1939(昭和14)年北海道生まれ。ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。『東條英機と天皇の時代』『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『ナショナリズムの昭和』(和辻哲郎文化賞)、『昭和陸軍の研究(上下)』、『昭和史の大河を往く』シリーズ、『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)など著書多数。2004年に菊池寛賞受賞。

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