中国と米国との貿易摩擦が強まり続けた2018年、一部の中国企業の窮状は深刻になった。
12月1日、中国と米国の首脳はアルゼンチンで双方が追加関税を猶予することで合意した。緊張はひとまず緩み、市場の雰囲気は好転。ただこのタイミングで、中国の国家税務総局は減税措置実施を発表した。国内経済を活性化させるためだ。
「税源は十分ある」
厳格な日本の税制とは違って、中国の一部の地方の税システムは相当に柔軟だ。
浙江省杭州市の、ある私募ファンド会社の財務担当者はメディアに対して、今年1年間、まったく税を納めていないと述べた。税務部門に申告するたびに「税源は十分にあるから、また次の四半期に納めなさい」と告げられる。そして次の四半期になると同じことを告げられて、その繰り返しだった、というわけだ。
中国社会では今年、減税を求める声が日増しに高まった。地方の税務当局は時勢を見極め、当局に税の減免措置ができる余裕がある場合は、減免したり、納税を猶予したりしたのだ。
浙江省の事例にとどまらず、国家税務総局は最近、今年上半期の税収の伸びが大きかった10数省に対し、第4四半期には、付加価値税(増値税)、法人所得税、消費税を中心に、徴税ペースを緩めることや、一定割合の税収は来年とるようにすることを求めた。
「徴税を猶予せよ」
財政部が発表した10月の税収は前年同期比5・1%減で、前月比では11・1ポイント減った。伸び続けていた税収のマイナスは2017年以来初めて。そのうち増値税は前年同期比2.8%減。2カ月連続のマイナスだが、減り幅は1・6ポイント拡大した。企業所得税は前年同月比で10%、消費税に至っては61・6%と、大幅に減った。
税務総局が11月19日に発表した、民営企業を発展させるための26件の施策の中に、まさに、「経営が苦しい民営企業には法に基づいて徴税を猶予する」措置があった。中国の経済ニュースメディア「財新ネット」も、中央政府の歳入を前年と同じに抑える措置が検討されていると伝えた。これは大規模減税が検討されていることを意味する。
減税や負担軽減がめざすのは「広い層が恩恵を受けること」といえる。税務部門は企業負担を劇的に減らし、大幅に税率を下げることで企業心理を好転させ、そして身軽になった企業を発展させようとしている。
米国との貿易戦争に対峙するため、中国はまずもって国内経済の維持と成長を守る必要がある。減税はその重要手段になった。
(在北京ジャーナリスト 陳言)