証券や保険などに金融分野に次々と手を広げているLINEが、いよいよ金融の「本丸」である銀行にも食指を伸ばす――。
大きな注目を集める、みずほフィナンシャルグループ(FG)と組んでの銀行業参入。7800万人の利用者を、どう金融サービスに誘導し、収益に結びつけるのかが課題となりそうだ。
フィンテック時代に向け次々新サービス
2018年11月27日の発表によれば、新銀行の準備会社を今後設立。資本金は20億円で、うちLINEの金融子会社「LINEフィナンシャル」が51%を、みずほFG傘下のみずほ銀行が49%を出資する。関係当局の認可を受け、2020年の開業を目指すという。
新銀行の具体的なサービスは明らかにしなかったが、スマートフォンを活用した個人間の送金や、個人向けの少額融資などを視野に入れているとみられる。店舗やATMを持たないため、低コストで運営できる。
LINEが金融事業をせっせと広げているのは、広告やゲームといった従来の収益源以外に、新たな柱を育てたいからだ。
金融とITを組み合わせた「フィンテック」の進化に合わせ、2018年1月にLINEフィナンシャルを設立。証券分野では野村ホールディングスと組みLINE証券の準備を進めているほか、保険分野では損害保険ジャパン日本興亜と提携し、LINEアプリ上で損保に加入できる「LINEほけん」を10月に開始。1日単位、100円からの手ごろな保険料プランを用意し、スマホの決済サービス「LINE Pay」で支払う手軽さを売りにしている。ほかにも、さまざまなテーマを選んで投資する「LINEスマート投資」やLINE上で収支を管理する「LINE家計簿」など新サービスを次々と展開している。
「アプリで完結」サービスの成否
今回の「銀行参入」にあたってLINEはみずほFGと協力し、個人の信用力を点数化した指標「LINEスコア」や、個人向け無担保ローンサービス「LINEポケットマネー」を今後提供することも発表した。LINEのグループ会社「LINEクレジット」が、みずほ銀とみずほFGのグループ会社であるオリエントコーポレーション(オリコ)から新たに出資を受ける。2019年春の出資完了時点で、LINEクレジットへの出資比率はLINEフィナンシャル51%、みずほ銀34%、オリコ15%となる。
「LINEスコア」はみずほ銀とオリコの与信審査ノウハウを活用するほか、LINEの利用状況やユーザーから提供を受ける追加情報を活用し、総合的に算出する。「LINEポケットマネー」はユーザーのスコアに応じ、最適な利率と利用可能額を決定する。急な飲み会や出張の立て替え、医療費など突発的な資金需要に対応し、申し込み、借り入れ、返済という一連の流れがすべてアプリ上で完結するサービスモデルを検討する。
自社の強みを生かし、金融の世界でも存在感を見せたいLINE。もっとも一連の金融サービスが、収益の柱に育つかは未知数だ。2018年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は、純損益が60億円の赤字(前年同期は120億円の黒字)だった。金融事業などの初期投資が足を引っ張った。
成長期待に見合うだけの実績を残せるのか。そろそろ正念場に差し掛かろうとしている。