「演じたら終わり」ではなく、宣伝も
吉村さんは、稽古のとき「あんた、えらいもんに手を出したわね」と樹木さんから言われたことが忘れられないと言う。
「その真意は分からないままですが、私や監督が茶道のことを知らなかったから映画化できたのかもしれません。制作する中でお茶を映画にすることって、こんなに大変なのかと実感しましたから。樹木さんは、映画が完成したら俳優から宣伝モードにがらっと変わった。演じたら終わりではない、そのあとが大事と宣伝活動に全力を注いでくださった。お茶にゆかりの深い京都の建仁寺で行った完成披露イベントも発端は樹木さんでした。今の結果を見て、樹木さんがどう思われるか聞けないのが残念です」
その京都でのイベントで、樹木さんはお茶を体験した感想をこう述べている。
「この次もし、縁があってこの地球上に生まれてくることがあったら、小さな茶室を設けて、夫と向き合って静かにお茶をたてながら人生をおくる、そういうことをしてみたいなあという気持ちにはなった」
映画の公式サイトでは、「見どころ」をインタビューした動画が公開されている。その中で樹木さんは「見どころは自分で見つけて」と言いつつも、「来年もまた同じことができることが幸せなんですね......と行きつく。今の時代に必要な作品になれば」と伝えている。
映画のヒットに合わせて、原作の売れ行きも伸びている。10月7日には原作の続編となる『好日日記(こうじつにっき)―季節のように生きる』(PARCO出版)が発売された。映画を見て、原作と続編を読み、お茶を通して成長した「典子」の物語をなぞっていくと、樹木さんが伝えたかったものが少しずつ見えてくるかもしれない。