海外大手宿泊予約サイト「トリップドットコム」で、旅館やホテルが満室にもかかわらず部屋を高額で「カラ売り」していたことが分かり、中国の運営会社「シートリップ」の日本法人がホームページ上で謝罪した。
テレビなどでは、カラ売りに関わった疑惑が報じられているが、シートリップ側は、取り引きしている一部の悪質な販売業者がやったと主張している。
熱海の高級旅館では、2連泊で25万円以上の価格
カラ売り疑惑については、トラベルメディア「Traicy(トライシー)」が、2018年12月1日のウェブ記事で「スクープ」として報じた。記事は、岡山県内で旅館などを経営している永山久徳さんが署名入りで書いた。
それによると、ある高級旅館は、年末年始はすでに満室にもかかわらず、とある「海外大手宿泊サイト」では、2連泊、食事なしの条件で、12月31日から空室ありと表示していた。それも、10万円と通常の価格の倍だったという。また、別の旅館は、年末年始に休館しているにもかかわらず、2泊25万円の空室ありだった。
記事では、他社の予約サイトで空きを見つければ、それを購入して差額を得ていたのではないかと指摘した。いわば転売という手口だ。客が予約をキャンセルすれば、キャンセル料は旅館などではなくサイトの収入になる。場合によっては、年末年始に部屋がないと客からクレームがある可能性があり、旅館側が迷惑しているとしている。
なお、文中で永山さんは具体的なサイト名を出していないが、文末にTraicy編集部の注として「消費者利益を鑑みて編集部の判断」によって、トリップドットコムの名が明かされている。
トリップドットコムの問題は、日本テレビ系の朝の情報番組「スッキリ」でも、12月6日の放送で取り上げられた。
番組では、静岡県熱海市内の高級旅館が、男性客から11月6日に問い合わせがあって、カラ売りが分かったことを証言した。19年1月1日からの2連泊で、満室にもかかわらず、25万円以上の価格が付けられていた。また、三重県内の旅館でも、満室にもかかわらず1月3日から1泊9万円以上の実際より高額な価格が付けられ、キャンセル料も旅館の規定と違って1週間前から100%の課金になっていた。
「個人情報になるので、業者の名前は教えられない」
トリップドットコムの問題については、ヤフー知恵袋でも9月、年末に泊まるホテルを予約したが、宿泊先のホテルに電話すると、リストに入っていないと言われたなどと、「カラ売り」を示唆する投稿があった。
テレビでも取り上げられたことを受け、ツイッター上では、「不安感じて会社情報調べたサイトだわ」「チェックインの時予約されてませんって言われたことある」「トリップドットコムでとってるんで 不安すぎます」などと書き込まれている。
トリップドットコムは12月6日、サイト上に「一部メディアでの報道について」とする文書をアップした。
そこでは、カラ売りについて社内調査を行った結果、「一部の悪質な販売業者によるものと判明いたしました」と報告し、関係者に迷惑をかけたとしてお詫びした。同様の事案が過去にないかなどの調べを進めているといい、「悪質な販売を続ける業者に対しては随時摘発し、永久取引停止の処置を行っていく」などとしている。
Traicy編集部の注やスッキリの番組では、「悪質な販売業者」は実在しないのではないかとの指摘があったが、シートリップ日本法人は6日、J-CASTニュースの取材に対し、「個人情報になりますので、業者の名前は教えることができません」と答えた。
消費者庁の表示対策課は同日、満室の旅館などのカラ売りについて、一般論として、実際のものよりも著しく優良などと一般の消費者に誤認を与えることを禁じた景品表示法第5条の1か2に抵触する可能性があると取材に答えた。過去には、こうしたケースを聞いたことがないという。
シートリップ日本法人では、カラ売りについて、「中国の本社と法に触れるか確認中です」としている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)