村田諒太は「王座」へ返り咲けるか 「ファイタータイプ」の功罪

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   ボクシングの元WBA世界ミドル級王者・村田諒太(32)が2018年12月4日、現役続行することを表明した。村田は10月20日に米ラスベガスで行われた2度目の防衛戦に敗れ、進退を保留していた。今後は現行のミドル級と1階級上のスーパーミドル級の2階級を視野に入れ世界王座返り咲きを目指していく。

   村田が再起するにあたって課題のひとつとなるのが、そのボクシングスタイルだろう。ファイタータイプの村田は、ガードを固めてボディーから崩していくスタイルをアマチュア時代から貫いてきた。プロ転向の際には、元キューバのナショナルコーチをトレーナーに付けてスタイルの変更を試みたものの、途中から再び現在のスタイルに定着した。

  • 村田諒太選手(2018年9月撮影)
    村田諒太選手(2018年9月撮影)
  • 村田諒太選手(2018年9月撮影)

近代ボクシングではジャブがポイントに直結

   近代ボクシングは、ジャブでのポイントが重視される傾向にあり、特に米国のジャッジはその傾向が強く見られる。ヘビー級至上主義の米国では、数発の軽いパンチよりも、一発で大きなダメージを与えるパンチが評価されてきたが、ヘビー級の衰退とともに近年ではジャブを主体とする洗礼されたヨーロッパスタイルが好まれるようになってきた。

   ラウンドマストシステムが採用されていることもジャッジがヨーロッパスタイルに傾倒する一因だろう。かつてのプロボクシングでは、ジャッジがイーブンとみなしたラウンドは点差がつかない10-10とされた。だが、近年、各ラウンドごとに優劣をつけるラウンドマストシステムが導入され、採点方式が大きく変化した。

   これによりジャッジは、わずかな差でも10-9というように優劣を付けなければならなくなった。一発のパンチが与えたダメージは、ジャッジする側に個人差が生じ、不透明な部分があるが、パンチのヒット数ならばより公正なジャッジが出来る。このようなことからも世界的に手数重視の流れとなっている。

   村田はこれまでも手数の少なさを指摘されてきたが、10月20日のロブ・ブラント(米国)戦においてそれは顕著だった。両者のパンチ数を比較すれば一目瞭然だった。

10人の世界王者が村田の標的

   12ラウンドを戦い抜いて、村田が放ったパンチは774発で、1ラウンドで平均すると64発。対するブラントは12ラウンドで1262発ものパンチを放った。ポイントに直結するヒット数をみると、村田の180発に対してブラントは実に356発のパンチをヒットさせた。

   村田は米国人のボブ・アラム氏とプロモート契約を結んでおり、世界戦の舞台に立つとすれば米国のリングとなる可能性が高い。ただ、近年の米国の採点傾向を見る限り、手数の少ない現行の村田のボクシングスタイルでは世界王座返り咲きは厳しいものになるだろう。

   一方で、世界王座返り咲きに向けて、選択肢をミドル級とスーパーミドル級の2つにしたことで、そのチャンスは広がりを見せる。現在、日本が認定する主要4団体(WBA・WBC・IBF・WBO)において、ミドル級世界王者は5人、スーパーミドル級の世界王者も5人存在し、計10人の世界王者がそれぞれの団体で王座に君臨している。

   団体数と王者の数が一致しないのは、WBAがミドル級、スーパーミドル級でそれぞれスーパー王者とレギュラー王者を置いているためで、WBAでは1階級に2人の世界王者が存在する。村田がWBAミドル級のレギュラー王者だった時も、サウル・アルバレス(メキシコ)が同級のスーパー王者のベルトを巻いていた。

   「伝統のミドル級」はアルバレスの台頭で、その注目度、ファイトマネーはいまやヘビー級をしのぐほどである。このミドル級戦線に復帰するには、しばらく時間がかかりそうだが「流れがきたら風に乗ればいい」と、村田に焦りはない。

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