サッポロホールディングス(HD)の株価が、「上昇気流に乗るかも」との見方が出ている。
注目を集めたのは、2018年11月22日に一時7.8%上昇した場面だ。野村証券が前日のリポートで投資判断を引き上げたことを受けて投資家の触手が動いた。サッポロHDは2018年1~9月期連結決算(国際会計基準)を発表した直後の11月5日にも一時10.9%も急伸する場面があったばかり。12月4日には下落の場面もあったが、缶チューハイ「99.99(フォーナイン)」の売れ行きなど、好材料も出ている。
「課題」2事業の改革が進んだと判断
野村証券が評価したのは、2019年のサッポロHDの動向を見通す中での「課題事業の構造改革」。課題として挙げるのは北米飲料と国内の自販機事業だ。
どちらもサッポロHDの主軸とは言い難い分野ではあるものの、これらの低収益性が重しとなり、業績を示す指標の一つ「EBITDA」(税引き前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益。国ごとに違う金利水準や税率などの差違を取り除くため、国際的な企業を分析する際に用いられる)が伸び悩んできたと指摘。
その上で、「決算後の取材等を踏まえ、課題事業の構造改革を前提に業績予想を見直した」とした。厳しい環境に直面する北米飲料、国内自販機事業ともに競合他社との提携やリストラなどによって事業を立て直し、足を引っ張る存在でなくすると予想しているようだ。
その結果、野村としての投資判断を3段階の真ん中の「ニュートラル(中立)」から「バイ(買い)」に格上げし、目標株価も2550円から3000円に引き上げた。
このリポートを受けて11月22日の東京株式市場では一時、前日終値比7.8%(191円)高の2643円まで上昇、3カ月半ぶりの高値をつけた。終値は前日比7.0%(172円)高の2624円。当日安値(2504円)が前日高値(2469円)を上回り「窓をあけて上げる」展開となった。
ここで、11月5日の急上昇を呼んだ2018年1~9月期連結決算の内容を見ておこう。売上高は前年同期比2.5%減の3810億円、営業利益は29.8%減の68億円、純利益は20.5%減の42億円と減収減益、減益幅は20%を超えるものだった。
キリンHDの背中はまだまだ遠いが
この数字だけ見れば株が売られそうな印象だが、市場の受け止め方は違った。まず、2018年6月中間連結決算において純損益が25億円の赤字(前年同期は1億円の赤字)、営業損益も30億円の赤字(前年同期は11億円の黒字)だったものが、いずれも黒字に転換しているという事実。レベルの低い話とも言えるが「最悪期を脱した」というフレーズを買いのチャンスとして好む投資家は結構多いのだ。
また、7~9月期に限って見ると営業利益は98億円。これは市場予想平均77億円を3割近く上回っており、少なからぬ驚きを与えるものだった。国内の猛暑効果が大きかったが、「北米飲料の収益悪化が一巡したのではないか」と受け止める声も聞かれた。11月5日の株価は一時、前日終値比10.9%(241円)高の2450円まで上昇、終値は7.5%(166円)高の2375円だった。
もちろん、2018年1~9月期に国内酒類部門で唯一増益を確保したキリンホールディングスの背中は遥かに遠いし、他の上位各社にも業績ではかなわない。しかし、アルコール度数が9%の缶チューハイ「99.99(フォーナイン)」の年間販売目標を当初比4割増の280万ケースに11月末に上方修正するなど、サッポロHDにも見るべきところは出始めており、株価も少しずつ上向く可能性はある。