現実が小説を追いかけている
水道事業の民営化については、出版物を通じて、問題を指摘する声が早くから出ていた。世界の水道事業に詳しいジャーナリスト、橋本淳司さんは、『67億人の水 争奪から持続可能へ』(2010年、日本経済新聞出版社) 、『日本の「水」がなくなる日――誰も知らなかった水利権の謎』(2010年、主婦の友社)など毎年のように関連本を出版。今年4月にも『水がなくなる日』(産業編集センター)を出している。
人気作家の吉田修一さんも今年5月、その名もずばり『ウォーターゲーム』(幻冬舎)を刊行した。水道事業利権を巡る国際的な陰謀をテーマとするミステリー。現実が小説を追いかけている格好だ。
『(株)貧困大国アメリカ』 (岩波新書)の大ヒットで知られるジャーナリスト、堤未果さんの近著『日本が売られる』(幻冬舎)も「水問題」を扱っている。冒頭部分は「水道」の話が延々と続く。日本の水道が「売られる」ことへのリスクをたっぷり書き込んでいる。10月刊行ですでに8刷13万5千部、トーハンのベストセラーで新書ノンフィクション部門のトップを爆走している。