広島からFA権を行使した丸佳浩外野手が2018年11月30日、広島市のマツダスタジアムで巨人に移籍することを表明した。丸外野手の獲得を目指していたロッテにはこの日朝、断りの連絡を入れ、宣言残留を容認していた広島にもこの日、断りの報告を行った。
2年連続でセ・リーグMVPを獲得し、FA史上最大の注目を集めた丸外野手が最後に選んだのは巨人だった。丸外野手を巡っては、広島、巨人、ロッテの三つ巴の争奪戦が繰り広げられ、3球団とも異例の大型契約を用意しての大激戦だった。
若手選手にとっては「チャンス」との見方も
条件面でいえば、巨人が広島、ロッテを圧倒していた。広島は4年17億円、ロッテは6年24億円超で、巨人はこれらを上回る5年30億円超に及ぶ破格の条件を提示。これに加えて原辰徳監督が現役時代に付けていた背番号「8」を提示したとされる。
11月24日に巨人と初交渉を行った際には原監督が直接出馬し、「ジャイアンツに新しい血を入れてほしい」と言葉をかけられ、これが入団を決めた大きな要因となったという。この日、広島に巨人入りを報告した丸外野手は「野球選手として環境を変えて一からチャレンジしようという気持ち」と改めて意気込みを語った。
丸外野手の巨人移籍に関して、ネットでの広島ファンのコメントは概ね肯定的で、「さびしい」との声は多く上がっているが、批判の声はごく少数である。広島ファンの声の中には、「若手選手のチャンスが広がる」として、歓迎ムードさえ漂っている。
12球団一の練習量を誇り、野手の層の厚さも球界随一。ここからくる自信の表れか、広島の野手陣には丸外野手移籍に悲壮感は見られない。
丸外野手と同学年の田中広輔内野手は「戦力的には痛いけど、外野手にとってはチャンス」と話し、今季、左翼として出場してきた野間峻祥外野手も「自分たちにとってはチャンス」と前向きにとらえている。
「新しい血」加わるのはむしろ広島か
また、1993年に巨人初のFA移籍選手となった元中日の落合博満氏は、広島のセ・リーグ4連覇を予言。この日、都内で行われた「2018スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞」の表彰式に出席した落合氏は「(広島が)4連覇する可能性って非常に高いと思いますよ」と、来季、広島の大きな戦力ダウンはないとの見解を示した。
2018年度の年俸がチームで2番目に高額とされる2億1000万円(金額は推定)の丸外野手は、FA制度においてAランクの選手となり、広島が巨人に対して金銭プラス人的補償を望むことが可能となる。
これに対して巨人は28人まで人的補償選手のプロテクトが可能で、広島はプロテクトから漏れた選手を人的補償として獲得することが出来る。
2013年には大竹寛投手がFA権を行使して広島から巨人に移籍した際、広島は大竹投手の人的補償として22歳の一岡竜司投手を獲得。一岡は移籍した年から1軍のマウンドに上がり、今季は59試合に登板して6勝をマーク。来季の年俸は、2400万円増の7700万円(金額は推定)と、大きく飛躍した。
広島が丸外野手の人的補償を求める場合、選手層の厚い野手陣を避け、若く将来性のある投手を選択すると想定される。巨人では出番がなく燻ぶっていた一岡のような若手の投手が、出場の機会を与えられることで大化けする可能性も十分あり、加えて広島は若手育成に定評があるだけに、より一層、チーム力の強化が見込まれる。
炭谷銀仁朗捕手に続いて丸外野手の獲得で、FAの大型補強に成功した巨人。これに対してチーム内の新陳代謝を行うことで新戦力の台頭が期待される広島。「新しい血」によってチームが活性化するのは巨人ではなく、広島かもしれない。