日本航空(JAL)の副操縦士、実川克敏被告(42)から基準値を大幅に超えるアルコールが検出され、英国当局に逮捕・起訴された問題で、ロンドン郊外の刑事法院は2018年11月29日(現地時間、日本時間30日未明)、禁固10か月の実刑判決を言い渡した。
これを受けてJALは11月30日(日本時間)に記者会見し、実川被告の懲戒解雇処分を決めたと発表した。ただ、JALは実川被告から事情をほとんど聴けておらず、アルコール検査をすり抜けた手口や動機は明らかにならないままだ
アルコール検査について「申し訳なかった」
実川被告は10月28日に拘束され、10月29日に一度拘束を解かれたが、31日になって、血液検査の結果血中アルコールが基準値の9倍以上だったとして再び拘束されている。それ以降、JAL側は本人と実川被告と接触できていない。
JALは10月29日から31日にかけて4回にわたって事情聴取を行ったが、担当弁護士から、実川被告に不利になるような質問をしないように求められた。そのため、検査をすり抜けたことに関する発言は、アルコール検知器の利用状況について「申し訳なかった」などと述べるにとどまった。JALはこの発言を根拠に、実川被告がアルコール検査を不正な方法ですり抜けたと認定している。
11月26日(現地時間)、有罪判決になれば懲戒解雇処分になる見通しを電話で伝えたところ、実川被告は「わかりました」と応じたという。
植田英嗣・総務本部長は、
「最後まで何が起きたのか、何をしようとしたのかは調査したい」
「協力してもらえると信じてアプローチしていく」
などとして、解雇後も聞き取りを続けたい考えだ。
JALでは、新型アルコール検知器を17年8月から国内で進めているが、それ以降も基準値(呼気1リットルあたり0.1ミリグラム)を超える事案が今回の実川被告の事案以外に20件起き、そのうち16件でパイロットを交代させたり基準値未満になるまで待ったりして、便が遅れている。
基準値超えは「停職、繰り返せば解雇」に厳罰化
この20件では、パイロットは譴責、減給、出勤停止といった処分を受けている。今回の事案を機に、基準値を超えたパイロットは「停職、繰り返せば解雇」に厳罰化する。
実川被告以外の懲戒処分としては、赤坂祐二社長と進俊則・運航本部長は、11月分の役員報酬をそれぞれ20%、10%返上したのに加えて、12月から3か月の役員報酬を20%、10%それぞれ減給する。それ以外に、実川被告と同乗するはずだった機長2人と、上司3人も処分された。それぞれ検査の際に相互確認を怠った点、管理責任が問われた。この5人の具体的な処分内容は「賞罰という人事情報で、社内でも公表してこなかった」として公表しなかった。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)