「大嘗祭への公費支出 疑問視」「宮内庁 聞く耳を持たなかった」――秋篠宮さまの記者会見内容をうけ、新聞各紙にこんな見出しが躍った。
天皇の代替わりに伴う儀式「大嘗祭(だいじょうさい)」への公費支出について疑問視する、皇族からの発言。宮内庁への苦言も飛び出し、各種報道では「異例」「波紋」「戸惑う宮内庁」と、その混乱ぶりを伝えている。
大嘗祭への公費支出を疑問視
2018年11月30日付の一般紙朝刊。秋篠宮さまの53歳の誕生日に合わせた記事で、事前の22日に紀子さまと記者会見した際の発言を各紙(東京最終版)が1面で報じた。
「大嘗祭 国費支出『適当かどうか』」「秋篠宮さま、皇位継承行事めぐり」(朝日)
「秋篠宮さま53歳 大嘗祭への公費支出 疑問視」(読売)
「大嘗祭に公費 違和感」「秋篠宮さま『宗教色強い』」(毎日)
「『身の丈にあった儀式に』 大嘗祭 私的活動費でとご見解」(産経)
4紙そろって「大嘗祭」が見出しに登場した。該当発言が飛び出したのは、事前に記者側から提出された5つの質問に答えた後のことだった(テレビカメラが入ったのは前半3つの質問)。追加の関連質問で「即位の行事や儀式についてのお考え」を聞かれた後のやりとりの中で、
「大嘗祭は皇室の行事として行われるものですし、ある意味の宗教色が強いものになります。それを国費で賄うことが適当かどうか、平成の大嘗祭のときにもそうするべきではないという立場だったわけですけれども(略)」
「宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに、私はやはり(J-CAST編注:天皇家の「私費」にあたる)内廷会計で行うべきだと思っています」(産経新聞 ご会見要旨より)
と回答された。
さらには
「言ってみれば身の丈にあった儀式にすれば。そういう形で行うのが本来の姿ではないかなと思いますし、そのことは宮内庁長官などにはかなり私も言ってるんですね。残念ながら考えること、話を聞く耳を持たなかった。そのことは私は非常に残念なことだったなと思っています」(同)
とも。こちらの発言も注目を集め、
「『宮内庁 聞く耳を持たなかった』」(朝日1面)
「皇族意見『聞く耳持たれず』 秋篠宮さま 違和感 吐露される」(産経2面)
などと報じられた。当の山本信一郎・宮内庁長官は、22日の直後の会見で「聞く耳を持たなかったと言われるとつらいが、そのようにお受け止めになったのであれば申し訳ない」(朝日記事)と話した。
「発言は寝耳に水」
大嘗祭への公費支出は、前回(1990年、平成2年)は約22億5000万円が支出され、今回も政府が4月に支出することを閣議で了解していた。秋篠宮発言は、政府決定に疑問を示されており、NHK(ウェブ版、30日)は「秋篠宮さま きょう53歳に 大嘗祭めぐり政府決定と異なる意見」の見出しで報じた。
宮内庁には衝撃が走っている。読売新聞(2面)は「異例発言 戸惑う宮内庁」の見出しで、「まさか記者会見で述べられるとは」との宮内庁幹部の驚きの声を伝えている。朝日(2面)も「秋篠宮さま『政教分離』発言 波紋」の記事で、宮内庁幹部の「発言は寝耳に水」との発言を報じた。
また、西村康稔・官房副長官は30日の閣議後会見で、「あくまで殿下ご自身の個人としてのお考えを述べられたもので、国政に影響を与えるものではないということから、憲法上の問題は生じない」と述べ、大嘗祭への公費支出の政府決定に変更がない考えを示した。
秋篠宮さまは来2019年5月の代替わりを受け、皇位継承順位1位で皇太子待遇の「皇嗣」となる。