審議の場が参院に移った出入国管理法(入管法)改正案をめぐり、新聞各紙の社説は、衆院での実質審議が17時間にとどまったことを問題視する論調で足並みをそろえた。
ただ、外国人労働者の受け入れ拡大そのものについては、「やむを得ない」(読売)といった声がある一方で、「なし崩しに受け入れ」(産経)が進むことを警戒する声など、温度差もみられる。
「押さえておくべきは、野党なども外国人受け入れに反対しているのではないということ」
法案が衆院で可決された直後の2018年11月28日から29日にかけて、主要全国紙が社説で相次いでこの問題を取り上げた。各紙が共通して取り上げたのが審議の拙速さだ。毎日新聞は
「急ごしらえで完成度の低い法案であることは誰の目にも明らかなのに、異論ばかりか建設的な提言すら一切受け付けようとしない政府・与党の専横ぶりはすさまじい」
としながら、「入管法改正案の議論は緒に就いたばかり」だとして、さらに議論が必要だとの立場だ。朝日新聞も
「国民合意を丁寧に積み上げるべきなのに、政府与党一体となって突っ走った」
と政権を非難した。ただ、
「押さえておくべきは、野党なども外国人受け入れに反対しているのではないということだ」
とも指摘している。日経新聞も、「衆院で17時間あまりの審議で採決に踏み切ったのは問題」だとしながらも、制度の導入については
「諸外国の教訓に学び、最良の制度として導入する責任が与野党双方にある」
と後押し。読売新聞は
「人手不足を補うには、外国人労働者の受け入れ拡大はやむを得ない。与党のみならず、多くの野党も認識を共有するはずだ。本質を外れ、駆け引きに終始したのは残念である」
などとして、野党側にも問題があるとの見方で、参院での審議には
「十分な審議時間を確保し、新制度の詳細について、踏み込んだ議論を行うべき」
だと注文した。