「35歳限界説」――。転職市場で叫ばれていた、文字通り「35歳を境に転職が著しく困難になる」という定説だ。「未曾有の人手不足」と言われ転職も活発な昨今だが、30代の転職市場にも変化はあるのだろうか。
急成長中の転職エージェント「Spring転職エージェント」のトップ・板倉啓一郎氏はJ-CASTニュースの取材に、「35歳限界説はなくなっています」と話す。むしろ30代は「即戦力」かつ「幹部候補」として必要とする企業もあるという。この連載第3回では、30代の転職のポイントを紹介する。
アデコ執行役員・人財紹介事業本部長で「Spring転職エージェント」最高責任者の板倉啓一郎氏
「即戦力」かつ「幹部候補」の30代
Spring転職エージェントは、世界最大の人材サービス会社アデコ(本社・スイス)の日本法人が運営する転職サービスだ。特長は2つある。1つは、業種でなく職種ごとに部門を分けて専門性を高め、他では得られない深い情報を提供する「職種別専門性」の体制を構築していること。もう1つは、担当を企業側と人材側に分けず、すべてのコンサルタントが企業と転職希望者どちらともやり取りする「360度式コンサルティング」という人材紹介手法をとっていることだ。
今年1月に発表された最新のオリコン「顧客満足度ランキング」転職エージェント部門で、Spring転職エージェントは堂々の1位に輝いた。その立役者となったのが、今回話を聞いた板倉氏。Spring転職エージェントのトップに就任した2014年からの4年で、売上高は約4倍増というめざましい実績を挙げている。
板倉氏は「転職の一般論として、もう35歳限界説はなくなっています」と迷わず断言、こう説明した。
「若手人材の確保がどんどん難しくなってきているため、これまで若手を置いていたポジションで30代を採用することも増えています。また、若年層は転職のサイクルが早くなってきています。35歳以上の人のほうが、腰を据えて5年10年働いてくれる可能性があるという見方もされるのです。
それだけでなく、会社側は人材確保が難しくなると、できるだけ即戦力を求めるようになります。30代は最もパワフルに働ける年代であり、経験と実績を積んで脂がのっている人も多いです。
即戦力としての活躍が見込めれば、3~5年くらい先の幹部候補として育てたいとも考えます。すぐに成果を出すプレーヤーとしての期待と、将来的に会社を担うマネジャー候補としての期待という両面から、30代の人を採用する企業もあるのです。
もちろん経歴次第ですし、前回もお話ししたように短期間での転職を繰り返していたりするとハードルは上がります。ですが、35歳という年齢の壁はいま、全くないと考えてよいでしょう」
時代の変化に対応できる人材という点でも、重宝されるのは30代だという。
「時代が変わり、仕事のスタイルも変わっていますし、昔と同じやり方では通用しない業務もあります。たとえばマーケティング部門では、どの企業でも当たり前のようにデジタルマーケティングが導入されています。こうした現代的なツールを扱える人材がほしい企業は多く、そうした手法を経験している30代の人材も求められています。一方、将来的に重要ポストも任せたいと考える会社なら30代後半でも若いくらいでしょう」