入管法改正案、「ザル」なのに衆院通過した理由

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   外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法(入管法)改正案が2018年11月27日に衆院を通過し、審議の舞台が参院に移った。受け入れ人数の上限など多くの部分が法案に書き込まれず、法案成立後に決まる「分野別運用方針」や省令に委ねられており、野党は「ザル法案」「白紙委任法案」などと反発している。

   衆院法務委員会での採決では、怒号が飛ぶ中で野党議員が委員長席に詰め寄るなどの「徹底抗戦」を演出したものの、結局は17時間15分の審議時間を経てあっさり通過。野党が攻め手を欠いたのはなぜか。

  • 一見荒れ模様の採決だったが、野党は攻め手を欠いていた(写真は衆院インターネット中継から)
    一見荒れ模様の採決だったが、野党は攻め手を欠いていた(写真は衆院インターネット中継から)
  • 国民民主党の玉木雄一郎代表。参院で対案を提出したい考えだ
    国民民主党の玉木雄一郎代表。参院で対案を提出したい考えだ
  • 一見荒れ模様の採決だったが、野党は攻め手を欠いていた(写真は衆院インターネット中継から)
  • 国民民主党の玉木雄一郎代表。参院で対案を提出したい考えだ

毎日世論調査、受け入れ拡大自体は賛否が拮抗

   法案は、新たな在留資格として、在留期限が通算5年の「特定技能1号」と、熟練技能が必要で期限が更新できる「特定技能2号」を設けることが骨子。政府・与党は今国会で最重要法案に位置付けており、12月10日の会期末までに成立させたい考えだが、受け入れの上限数や受け入れ環境整備に向けた具体的な対応策が法案では示されていないとして、野党は反発を強めていた。

   世論調査の結果でも、法案審議が拙速だとみる向きはあった。例えば毎日新聞が11月17~18日に行った世論調査では、改正案について「今国会で成立させた方がよい」は9%にとどまり、「今国会での成立にこだわらず議論を続けた方がよい」と答えた人が66%にのぼった。ただ、外国人労働者の受け入れを拡大する政府方針自体に対しては、「賛成」44%、「反対」42%と拮抗した。

   そのため、野党としても外国人労働者受け入れそのものではなく、審議の進め方や法案の内容に関する追及に重点を置くことになったが、両方とも奏功しなかったようだ。

   前者は、解任決議案のタイミングだ。衆院の常任委員会は質疑の「定例日」が設けられており、法務委員会は火、水、金だ。政府答弁を踏まえた質問を準備するための慣例だが、入管法改正案は葉梨康弘・法務委員長(自民)の職権で、21日(水)、22日(木)、26日(月)、27日(火)の4日間、計17時間15分にわたって審議が行われた。29日から安倍晋三首相が外遊を予定しているためで、4日中2日を「定例日外」に審議するという異例のスケジュールだ。

国民民主が対案を衆院で出せなかった理由

   実は立憲民主党が11月16日に葉梨氏の解任決議案を提出したが、法案が実質審議入りする前日の20日に本会議で自民、公明両党などの反対多数で否決されている。解任決議案は1回しか出せないため、野党は葉梨氏が決めたスケジュールに対してなすすべがなくなった。

   後者は、対案をめぐる問題だ。国民民主は11月21日の総務会で対案をまとめている。半年間法案の施行を延期し、(1)地方への人材確保への配慮(2)産業別・地域別の受け入れ上限の設置、などが骨子で、参院法務委員会で実質審議入りする11月29日にも提出したい考えだ。これを衆院で提出できなかった理由を、玉木雄一郎代表は11月28日の定例会見で、

「対案というのは『議論をしてくださいよ』という意思表示でもあり、定例日以外に(委員会を)立てていることを認めることにもなる。ちょっとあの状況では、中々出す環境は整わなかった」

と説明。戦術ミスが尾を引いたことをにじませた。さらに、

「他党にも呼びかけはしていきたいが、共同提出という形になるかどうかについては、相手もある話。こういった交渉事についても、一義的には参院に委ねたい」

とも話し、野党の足並みが揃うかどうかも不透明だ。

   日本維新の会は賛成に回った。法律施行後の見直し規定を「3年後」から「2年後」に修正することで与党と合意したためだ。馬場伸幸幹事長は11月27日の会見で

「他の野党も、もっと建設的な議論を行ったうえで、集積をきっちりと求めていくべきではなかったか」

と話した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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