日本酒に使う徳利(とっくり)は、先がとがっている「注ぎ口」から「注いではいけない」――。酒席にはこんなマナーが存在するとして、真偽をめぐってインターネット上で注目されている。
発端となったツイッターへの投稿が拡散されると、「知らない」「くだらない」と否定的な声が相次いだ。一方で、情報サイトの中にも「注ぎ口を上にして反対側から注ぐ」のがマナーだと紹介しているものがある。実際のところ、守るべきマナーなのか。複数の専門家に見解を聞いた。
「注ぐ際は上を向けた状態にするのがマナーです」?
ツイッターで話題を集めたのは2018年11月25日のあるユーザーの投稿だ。徳利のマナーを紹介した情報サイトのスクリーンショットをアップしており、記事には「徳利の注ぎ口には絞ってある(編注:とがっている)部分がありますが、注ぐ際は上を向けた状態にするのがマナーです」と書かれている。画像が2枚あり、絞ってある方から注いでいるものを「間違い」、絞ってない方から注いだ画像は「正解」と明記していた。
サイトのこうした説明は聞き慣れなかったのか、「なんでこんなくだらないマナーが」「ソースも信憑性も不確か」「注ぎ口って、お酒を注ぎやすいように付けてあるんじゃないのかな?」と疑問の声が相次いだ。投稿は2万以上リツイートされるなど拡散している。
同サイトに限らず、徳利の使い方として「細くとがった場所を上に向けて注ぐのが正解です」「注ぎ口を上にして反対側から注ぐのが正しい注ぎ方です」などと同様の紹介をしている情報サイトの記事が複数見つかる。総合すると、そうすべきとされている理由は3つあるようだ。
(1)注ぎ口を上に向けた形が仏教の「宝珠」の形に近く美しく見えるため
(2)注ぎ口は「円(縁)の切れ目」という語呂から縁起が悪いため
(3)戦国武将を暗殺するため注ぎ口に毒を塗ることがあったため
本当に酒席のマナーとして守るべきことなのだろうか。1673年創業の日本酒の老舗・玉乃光酒造(本社・京都市)は、公式サイトで「お酒を嗜むときのマナーについて」というコラム記事を4月に掲載していた。「日本酒の注ぎ方」という項目もあるが、今回話題になった「注ぎ口から注いではいけない」旨は書かれていない。
J-CASTニュースが11月27日、同社を取材すると、「丸い方から注ぐのがマナーとされているというのは、聞いたことがあります」としながら、
「ダメな理由は諸説あるようですが、詳しくは存じません。出元なども分かりませんし、当社としてもそれがマナーであるという啓蒙活動はしていません」
と話していた。