「かなり背伸びした数字」(大手紙経済部デスク)
一方、成長戦略として、これまで稼ぎ頭だった半導体メモリー事業を売却した後の柱と位置づけるのが、エレベーターや鉄道部品といったインフラ事業で、5年後に全社で4000億円の営業利益を目指すうち、4割を稼ぐ考えだ。インフラ事業に含まれるリチウムイオン2次電池では新工場を建設し、鉄道用や車載用への販売を拡大する。同電池と、パワー(電力制御)系電子部品、がん検知など精密医療技術の3事業を新規成長事業に位置づけた。
出遅れていた再生可能エネルギー発電事業や、空調の製造拠点整備なども進める。火力発電所設備など不振の事業も撤退せず、人工知能(AI)やIT関連技術を活用して保守や点検などのサービスで稼ぐモデルへの転換をめざす。
これまで「半導体メモリー事業に多額の投資をして他の分野に投資ができていなかった」(車谷暢昭会長兼最高経営責任者=CEO)が、今回のプラン期間中、全社で設備投資と研究開発に計1兆7000億円強を投じるとした。
こうした施策を通じて、2019年3月期の見通しで3兆6000億円の売上高と1%台の売上高営業利益率を、2022年3月期に3兆7000億円と6%以上に引き上げ、さらに計画の最終年度の2024年3月期は4兆円と10%を目指すとしている。
だが、今回のプランでは事業の「選択と集中」には踏み込まなかった。いまある22の事業領域は、そのまま残し、それぞれで稼ぐ力を引き上げるとしたが、事業ごとの収益目標も示さないなど、物足りなさが残る。
リチウムイオン電池など新規成長事業は他メーカーも力を入れ、競争は激しい分野。インフラとITを組み合わせて稼ぐ戦略も、国内外の同業大手も取り組むが、世界でも成功しているのは独シーメンスぐらいとされる。このため、収益目標も「かなり背伸びした数字」(大手紙経済部デスク)との指摘もある。