日本・大阪92票、ロシアのエカテリンブルグ61票――。アゼルバイジャンの首都バクーを下ろし決選投票に持ち込まれた2025年国際博覧会(万博)の開催国選挙は、「大阪」がロシアを破って、1970年以来で55年ぶり2回目の開催を勝ち取った。
2018年11月24日1時すぎ、メディアがニュース速報を流し、朝には新聞が号外を打つなど、大阪をはじめ全国に喜びの声が伝えられたが、町の人は意外に冷ややかなようだ。
ホテルで関係者300人が歓喜、街ではクス玉割り
2025年国際博覧会(万博)の開催国を決める博覧会国際事務局(BIE)総会が11月23日(日本時間)にパリで開かれ、日本からは、政府から世耕弘成経済産業相、万博誘致委員会から榊原定征会長(日本経済団体連合会名誉会長)、松井一郎大阪府知事らが最終プレゼンテーションに臨んだ。
大阪・中之島のリーガロイヤルNCBには、国会議員や大阪府議・市議、関西経済同友会や大阪商工会議所などの地元経済界の関係者ら約300人と報道陣約100人が詰めかけ、そのもようを固唾飲んで見守った。
24日0時59分、決選投票で2025年万博の大阪開催が決まり、現地の松井府知事らが総立ちとなってガッツポーズする姿が映し出されると、「うおぉ~」と歓喜に沸いた。この日のために準備に明け暮れた府の職員らも目頭を押さえる姿があった。
喜びの声は大阪の街にも。道頓堀の戎橋南側にある、トンボリステーションではBIE総会のもようをLIVE放映。決定時にはクス玉が割れ、「祝 2025年万博、大阪に決定!」の文字が浮かんだ。
また、1970年万博の会場だった万博記念公園(吹田市)にそびえ立つ「太陽の塔」は1時45分から、ライトアップでお祝いムードを盛り上げた。
地元・大阪では、BIE総会前から「ロシア優勢」の声が漏れていたとされ、加えて日産自動車のカルロス・ゴーン会長逮捕の報で「フランスやレバノン、ブラジル、オランダの票がロシアに回る」とのウワサがまことしやかに流れるなど、気が気でなかったようす。それだけに喜びもひとしおだったのかもしれない。
「朝のニュースで知りました」
とはいえ、そんな盛り上がりに沸いていたはずの大阪の街は、じつは意外にも冷めていた。お祭り騒ぎで「恒例」の道頓堀川への「ダイブ」騒ぎもなく、
「(メディアに)カメラ向けられれば、『うれしい』って言うに決まってるじゃん」(20代男性)
といった声や、
「テレビをつけて、朝のニュースで知りました」(50代男性)
という人は少なくなかった。
今週、大阪ではニュース番組などが「万博特集」を組み、1970年の大阪万博を振り返ったり、「対抗馬」と目されたロシア・エカテリンブルグの情報とともに、「票読み」を予測してみたりと、「招致ムード」を醸成しようと熱が入ったが、「議員さんや、商店街や企業の幹部の人などの、一部の人だけが盛り上がっていた感じ」だったという。
大阪万博に冷ややかな見方がある背景には、会場となる「夢洲」のせいかもしれない。大阪にとって、夢洲は「負の遺産」といわれる。大阪が招致を試みた2008年の夏季オリンピックの会場候補地とされたが、これに敗れた。それを万博招致に切り替える一方で、最近ではカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する計画も浮上する。
ただ、このカジノ計画には反対の声が少なくないほか、「万博招致に失敗すれば、交通アクセスなどを含め、事業者負担が増してIR構想も頓挫する」との見方があった。
経済産業省によると、大阪万博2025の経済効果は約2兆円。万博開催決定は、こうした経済効果が見込めるほか、IR誘致に反対する人の声をも封じ込める「絶好の材料」なのだから、政府や大阪府、財界関係者が大喜びするわけだ。