2015年末に日韓が結んだ慰安婦合意に基づいて日本政府が10億円を拠出し、韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」が解散することになった。韓国の女性家族省が18年11月21日に発表した。
財団は合意の柱のひとつだとも言え、日本側は「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまう」(安倍晋三首相)と強く反発。対する韓国メディアでは、一転「むしろ遅い感がある」などと解散を歓迎し、日本政府に対して「解散手続きに協力」するように求める声もあがっている。
韓国政府は「合意を破棄することはない」「再交渉を求めることはない」と説明
河野太郎外相によると、韓国政府は「合意を破棄することはない」「再交渉を求めることはない」などと従来の立場を維持しているが、韓国メディアは、必ずしもそうは受け止めていないようだ。
11月22付の紙面では、多くの新聞が財団解散の問題を社説に取り上げた。ハンギョレ新聞は、財団解散が「むしろ遅い感がある」として、10億円を支出して合意を履行してきた日本の対応を「普遍的な人権基準を無視する措置」だと、法的責任を認めて謝罪することを要求した。さらに、韓国政府に対して
「韓日両国の市民社会間の対話の幅を広げ、国際世論を喚起し、日本政府を説得する努力を」
を求めた。
「誤った国家行為」を正すためならば...
京郷新聞も、
「間違った方向に流れていた慰安婦問題の解決の道を正した」
と財団解散を評価。日本政府に対しては、
「国家間の約束が破棄されたとだけ主張するのではなく、誤った国家行為を正す意味があるという点を理解」
すべきだと主張。韓国側が考えるところの「誤った国家行為」を修正するためならば、国家間の合意を反故にすることもいとわないとする立場をにじませた。
ソウル新聞も、
「日本はこの問題で関係悪化の拡大を図ってはならない。韓日間の不和の多くは、歴史問題に根差している」
と、これに近い立場だ。
「『悪い隣人』ともうまくやっていく」のが「外交」
日韓関係悪化への危機感が比較的強いのは、世界日報と韓国経済新聞だ。世界日報は、北朝鮮への対応で日韓米の足並みが乱れるリスクを指摘し、
「国益のためには『悪い隣人』ともうまくやっていく方法を学ぶ必要である。それが外交だ」
と主張。韓国経済新聞は、日韓通貨交換(スワップ)協定の問題。協定は15年2月に終了し、再開に向けた協議は慰安婦像設置をめぐる問題で中断している。社説では、
「少女像などの問題で交渉チャンネルさえも途切れた」
「『韓国が再び通貨危機を迎えるなら、以前のように助けてくれる国があるのか』という懸念が国内外で提起されている」
などとして、スワップ協定復活のために、日韓関係のこれ以上に悪化は防ぐべきだとの立場だ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)