「夫婦のはじまりとされる結婚式について思うこと、カミングアウトしませんか?」「結婚式の不自由さに責任を感じています」――こんな投稿がツイッターでなされたのは、「いい夫婦の日」の11月22日だ。
投稿したのは結婚式のプロデュースを手がけるベンチャー企業。夫婦の絆を深めたり、互いに感謝し合ったりするのが一般的なこの日に、なぜあえて挑戦的とも取れるメッセージを発信したのか。広報担当に話を聞いた。
「結婚式に明確なルールはないけど、暗黙知のしきたりがある」
結婚式のプロデュースやコンサルティングを行うCRAZY(本社・東京都墨田区)は2018年11月22日朝、ツイッターで「いい夫婦の日に結婚式の会社が言うのも変ですが...」と切り出し、こう発信した。
「夫婦のはじまりとされる結婚式について思うこと、カミングアウトしませんか? 私は、結婚式の不自由さに責任を感じています。少し難しいですが、今日をきっかけに、もう少しだけ祝いやすくなりますように #結婚式に自由を」
添付された画像には、「#友達どこまで呼ぶ」「#ご祝儀は3万円」「#引き出物袋大きすぎ」など、式についての「本音」のような言葉がズラリ。さらに「これだとまるで忖度式」という皮肉めいたフレーズと、一際大きな字で「#結婚式に自由を」という企画タイトルが書かれている。
同社は22日に特設サイトも開いており、「結婚式に明確なルールはないけど、暗黙知のしきたりがある。考えてみると、結婚式はとてつもなく不自由じゃないか。このプロジェクトは、みんなが感じている本音の声から、結婚式を、もっと自由で多様なものにしていく活動です」と趣旨を説明。具体的には、「#結婚式に自由を」のハッシュタグをつけてのツイッター投稿を呼びかけたり、結婚式について考えるイベントを表参道で実施したりしていく。22日の午前から昼頃にかけては、ツイッターで「#結婚式に自由を」がトレンド入りした。
それにしても、日頃の感謝を伝え合うといったイメージの「いい夫婦の日」に、こうした議論を喚起する企画を打ち出したのは一体なぜなのか。CRAZYの広報担当者は22日、J-CASTニュースの取材に対し、
「『いい夫婦の日』という記念日は素晴らしいと思っており、否定するわけでは全くありません。ただ、3年前のある調査では、この日にお祝いしている夫婦は4%しかいないという結果も出ています。結婚式は夫婦にとって人生の大きな分岐点です。『いい夫婦の日』に結婚式について考えることには意義があると考えています」
と話す。
「共感しかない」など反響相次ぐ
ウェブマーケティングを手がけるクリエイティブサーベイ(本社・東京都港区)は15年11月、「いい夫婦の日に関する意識調査」(21~69歳の既婚男女640人が同8~9日に回答)の結果を発表している。ここで「『いい夫婦の日』には夫婦でお祝いをしていますか?」という問いに、「ほぼ毎年している」と答えたのが4%だったのだ。「お祝いしたことがない」人は82%と大半を占めていた。
こうした現状から、CRAZYの広報担当者は「『結婚式ってどうあるべきかな?』というのを社会に問い直したい、議論する流れを作りたいと思い、今回の企画が立ち上がりました」とし、こう話す。
「今後、LGBTの方々の式、事実婚の方々の式、ひとり結婚式、5周年式なども盛んになると思われます。その一方で、結婚式業界の『しきたり』は数十年間変わっていないと業界人も認識しているところがあります。手が加えられてこなかったものをアップデートしようという考えもあります」
「#友達どこまで呼ぶ」などのフレーズは、同社が実際に客から受けた相談や、社員が知人から聞いた本音がベースになったという。今回ツイッターでは、「#結婚式に自由を」のハッシュタグをつけながら、
「言われてみれば本当にそうだね...呼ばれる方も呼ぶ方も、気を使うことが多すぎて、幸せなパーティーしたいだけのハズなのに、なんかおかしいもんね?」
「共感しかない(笑)大学4年間、結婚式場でバイトしてたけど、祝辞や余興がしらけるパターンが8割くらい。可哀想だった」
といった投稿をするユーザーが相次いでいる。
こうした反響に担当者は
「今後も本音を言いながら楽しく議論していきたいと思っています。今あるものを否定するわけではなく、いろいろな形の結婚式ができるようになっていけばいいなと思っています」
と話していた。