東京五輪マラソン「5時半スタート」で、選手・観客にどんな影響が出るのか

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   2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、男女マラソンのスタート時間を繰り上げる方針を固めた。8月(女子2日、男子9日)に予定されているレースは当初、午前7時のスタートが検討されていたが、東京の8月の暑さを考慮し、午前5時半から6時頃のスタートで調整に入る。

   マラソンのスタート時間を巡っては、18年10月29日に日本医師会と東京都医師会が大会組織委員会に「選手や観客の命にかかわりかねない」として、スタート時間の繰り上げを要請。今回はこれを受けての時間繰り上げとなる。

   東京五輪では、最大1時間30分の繰り上げが見込まれ、その場合、スタートは午前5時30分となる。この早朝スタートは、果たして「英断」なのだろうか。過去の五輪と比較すると、今回のマラソンスタート時間は突出して早いものとなる。

   2000年以降に実施された五輪におけるマラソンのスタート時間は以下の通りだ。

2000年シドニー五輪 女子 午前9時 男子 午後4時
2004年アテネ五輪 女子 午後6時 男子 午後6時
2008年北京五輪 女子 午前7時30分 男子 午前7時30分
2012年ロンドン五輪 女子 午前11時 男子 午前11時
2016年リオデジャネイロ五輪 女子 午前9時30分 男子 午前9時30分
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スタート時間はテレビ局の影響も

   これまでの五輪のマラソンのスタート時間に関して、ややばらつきがあるのは、当該国の気候を考慮したものでもあるが、テレビ放送も大きく影響している。テレビ放映権を持つ国のゴールデンタイムに合わせてスタート時間が決まるケースもある。

   1991年に東京で開催された陸上世界選手権では、9月1日に男子マラソンが行われ、スタート時間は午前6時だった。スタート時の状況は、気温26度、湿度73%という酷暑だった。ここ最近の猛暑は91年当時とは比較出来ないほどで、8月の東京でのマラソンはまさに生命の危機にさらされる可能性がある。

   出場する選手にとって、スタート時間の繰り上げはメリットよりもデメリットの方が多いだろう。メリットといえば、時間が繰り上がることによって、より気温が低くなり身体にかかる負担が減ることくらいだろう。

   午前5時30分スタートを想定した場合、選手はレース当日の0時過ぎには起床し、レース3時間前には食事を済ませ、準備に入る。通常、マラソン選手の早朝練習は早くても6時過ぎから開始される。試合と異なり練習のため、起床はせいぜい練習の1時間前で十分だろう。

   東京五輪で日本代表になった選手は通常の生活を「五輪仕様」に変える必要がある。海外から参加する選手にいたっては時差の問題などもあるが、5時30分スタートに調子を合わせるのはかなり厳しいものとなるだろう。

2002年サッカー日韓W杯では臨時列車が

   また一方で、一般の観客の問題も浮上する。マラソンは男女ともに東京・千駄ヶ谷の新国立競技場発着のコースで行われる。5時30分にスタートした場合、観戦チケットを購入した一般人が公共の交通機関を使用してスタート時間までに競技場にたどり着くことができるのだろうかは疑問である。

   2002年のサッカー日韓W杯においては、JR東日本などが大会期間中に臨時列車を運転して対応した。ただ、これは試合終了時間が遅くなることによって帰宅出来ないファンに対しての配慮だった。

   公共の交通機関での来場が不可能な場合、前泊という手段を取る必要が出てくるが、五輪期間中の周辺の宿泊施設は関係者によってすでに多くが押さえられ、たとえ空室があったとしても「五輪価格」で通常の倍以上も値段が跳ね上がる。

   観客のみならず、レースを運営するスタッフもまた同様の問題を抱える。五輪のマラソン運営には500人近くのスタッフが必要とされ、そのスタッフの競技場までの交通手段、宿泊施設などの問題をクリアしなければならない。

   スタート時間の繰り上げ幅に関しては近く、国際オリンピック委員会(IOC)や競技団体と調整に入り、12月上旬にも正式決定する。

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