「本人確認」問題が炎上し、決算会見で釈明する場面もあるなどネットを騒がせたメルカリだが、投資家の視線はなお熱い?
2018年11月前半には、7~9月期連結決算の内容に反応して急騰する場面もあった。2019年6月の東証マザーズへの新規上場時につけた高値から右肩下がりの基調を変えるにはいたっていないものの、市場の期待はまだまだ高いようだ。
SMBC日興証券「成長性再認識すべき」
急上昇のきっかけとなった決算が発表されたのは11月8日。メルカリは6月期が通期決算なので、この日に発表された2018年7~9月期は第1四半期決算ということになる。
「発足から間もない企業なのだからもっと長い目で見てはどうか」とも感じる向きもあろうが、株式市場は待ってくれない。内容は、売上高が105億円、営業損益が25億円の赤字、純損益が28億円の赤字(上場前の前年同期は同様の財務諸表を作成していないため比較できず)と赤字決算だった。まだ利益を回収する段階にない米国事業への投資などがかさんだことが響いた。
ただ、主力の国内メルカリ事業の流通総額は990億円と前年同期比で41%(288億円)増えた。市場が注目したのはこの点だ。流通総額とは、一般消費者がメルカリを通じて購入した金額の合計。メルカリにとってはこれが増えれば決済に応じて受け取る手数料収入が増えることになる。SMBC日興証券は決算を受けたリポートでこの点を踏まえて「決して鈍化していないメルカリの成長性を再認識すべき」「市場の不安心理が多少取り除かれるのではないだろうか」と指摘した。
米国事業成功なら大爆発も
翌9日の株式市場では一時、前日終値比14.8%(444円)高の3440円まで上昇した。ただ、戻り待ちの売り圧力も強く、その後は売り買いが交錯し、値幅の大きい展開となり、終値は前日比4.0%(119円)高の3115円、週明け12日には3245円をつけた。とはいえこれをピークに、20日までに500円近く落とすなど、市場の期待と不安をうかがわせる展開となっている。
市場が注目しているのはメルカリが注力する米国事業だ。2018年7~9月期の米国内の流通総額は80億円と日本国内の1割にも満たないが、軌道に乗れば途方もない稼ぎを生む可能性を秘める。さまざまな手を打っており、その一つが「匿名輸送」だ。メルカリを介することで売り手と買い手が互いの宛名を知らないままに取引をできるようにするシステム。女性の一人暮らしなどにとってはリスクを回避するためにありがたいものだ。
日本では2015年に始めており、これが消費者の抵抗感を和らげて急成長する一因となった。米国では匿名輸送はまだ一般的ではないため、これをテコに取扱高を増やしたい考えだ。
「メルトリップ」「メルペイ」など積極投資
メルカリは旅行関連の交流サイト「メルトリップ」や決算事業「メルペイ」など矢継ぎ早に新規事業への投資を行っており、人材も急速に集めつつある。
そんな新興企業がすぐ黒字になるはずないのだが、市場は悠長に待ってくれない。6月19日の上場日に今も最高値となる6000円をつけた後は、下がる一方で、10月下旬には公開価格の3000円を割り込み、30日には一時、2626円をつけるなど、含み損を抱える投資家が増えている。国内外の証券各社も8月以降、目標株価を軒並み引き下げた。
ただ、国内では質屋的なビジネスの取引減少という影響が一部で「メルカリエフェクト」と呼ばれるほど、世の中を変えつつあるのも事実。その成長力を見極めるにはもう少し時間をかける必要もありそうだ。