「もう乗り越えようとしないです」
そんな羽生も全日本選手権はここ2年、連続で欠場している。16年はインフルエンザ、昨年は右足首の負傷により欠場した。羽生は全日本選手権を、五輪、世界選手権と異なった意味で「特別な大会」と称する。「全力で治療します」の言葉は、GPファイナルだけではなく、全日本選手権にも向けられているのだろう。
進化し続けるためにリンクに立ち続ける。GPファイナルへの「強行出場」は決して強がりでも、王者のプライドでもないのだろう。苦境を前にした時の心境を、羽生はかつて次のように語っていた。
「もう乗り越えようとしないです。つらいものはつらい、認めちゃう。つらいからもうやりたくないんだったら、やめればいいし。それでいいと思ってます、僕は」
23歳の王者はもはや悟りの境地に達しているのかもしれない。