あるボールペンが1本約23万円という超高価格で売買されている。
インターネット通販のアマゾンで取引されているそのボールペンは、文具メーカー・パイロット社製の「ハイテックC うすずみ」という商品。3年前に販売終了になったカラーだ。希少価値はあるが、それにしても高すぎる印象は拭えない。何が魅力なのか、J-CASTニュースは「うすずみ」愛用者に話を聞いた。
「去年あたりから価格がおかしい」
ツイッターでこの価格高騰について投稿があったのは2018年11月14日だ。あるユーザーが「去年あたりから価格がおかしい」として、アマゾンの商品ページのスクリーンショット画像を投稿。0.5ミリの「ハイテックC05 うすずみ」が、新品価格23万円前後で出品されているのが分かる。
実際にアマゾンのページを確認すると、16日時点でマーケットプレイスに新品が4点出品。ボールペン1本ながら、下は22万884円、上は23万4759円といずれも超高額だ(0.3ミリの「C03」、0.4ミリの「C04」は出品がない)。商品公式サイトによると同シリーズの定価は200円だ。
パイロットの営業企画部担当者は15日、J-CASTニュースの取材に、「ハイテックC」シリーズのうち「うすずみ」というカラーは2004年に登場し、2015年に生産終了になったと答えた。「ハイテック」自体は現在も販売が続く人気シリーズで、多い時は40色以上をラインアップしていたが、「色の入れ替えは流行や売れ行きなどを見て定期的に行っています」としていた。
「ハイテックC」はビジネスマンの手帳用などを想定して発売。その後「カラー展開が増えるにつれ、小さな文字びっしりと書く女子中高生を中心に支持されました。また、細密なイラストを描く方からもご指名いただいていました」と支持層を広げたという。
解せないのは「うすずみ」の異常高騰だ。アマゾンを見ると、終売となった他のカラーのうち、1万数千円ほどで取引されているものはあるが、いずれのカラーも万単位のものは1点にとどまる。23万円前後が4点もそろっているのは「うすずみ」だけだ。こうした高騰についてパイロットに見解を求めると、担当者は「すでに販売を終了している商品であり、その価格については当社は回答する立場にありません。ご了承のほどお願いいたします」との答えだった。
愛用者、終売後「未だに理想のグレーには出会えずじまい」
そこで「ハイテックC うすずみ」の魅力について、ツイッターのダイレクトメッセージ(DM)を通じて愛用者に聞いてみた。使用歴10年のツイッターユーザー「ねこねこbot」(@tamachan2018)さんは、日記、手紙、ノートづくり、イラストなど用途は幅広い。愛用の理由は、
「とにかく色がちょうどいいグレーで、びっしり文字を書いても鬱陶しくならなくて愛用していました。字が汚くて黒だとげんなりするのが和らぎます。それからアルコールマーカーで色を塗っても滲んだりせず、やわらかい印象になります」
という。さらに「ハイテックCの書き味の良さが他にはなく、強い筆圧でも耐えられるペン先、かすれにくい細い綺麗な描線、重さ、持ちやすさなど、お気に入りです」としていた。
終売になってからさまざまなグレーのボールペンも試したが、色の濃淡、ムラ、描線の美しさなどがしっくりこない。パイロットではグレーカラーの後継品としてゲルインキボールペン「ジュース」を販売しているが、ねこねこbotさんは「やはり色味と書き味の点で代用には至りませんでした」。さらに「万年筆のグレーインクにも手を出しましたが、未だに理想のグレーには出会えずじまいです...」と話している。そのため「ぜひ再販してほしいです」といい、「箱買いしたいです」と復活を熱望している。
一方、23万円という値付けについては、「定価以上でも購入する層がそこそこいて、徐々に上がったのかそうでないのか気にはなりますが...さすがに手は出ません」とやはり高すぎた。
「他の灰色のペンでは代替がききません」
DMでの取材に応じた別の愛用者の27歳男性は、中高生時代から大学卒業までの5~6年ほど、主に図表の罫線を引く目的で「うすずみ」を使用。気に入っていたわけは、
「薄い墨の色のインクが最大の特徴で、コレは他の灰色のペンでは代替がききません。他の灰色のボールペンは、赤みがあったり青みが強かったりするからです」
とのことだ。
終売の事実を知ったのは「今年に入ってから」で、「ほんとうにショックでした。いろいろ他の灰色のボールペンをためしましたが、やはりどれも違うと思いました」という。パイロットに問い合わせて再販を希望している旨を伝えたこともある。23万円という価格で出回っていることについては「やっぱりみんなほしいんだなぁと思いました。自分は値段でためらってしまいます......」と答えていた。