安倍晋三首相が2018年10月25日から27日までの3日間、中国を公式に訪問した。日本の首相の7年ぶりの公式訪中だ。北京到着翌日には「中日第三国市場協力フォーラム」に出席して、中日両国企業による調印式に顔を出した。
日本の報道ではあまり触れられなかったが、フォーラム出席前には、安倍首相は李克強首相と共に、第三国での協力を含めた、日中のこれまでの経済協力を写真で振り返る展示会を参観した。中国メディアはその様子を大きく伝えた。
「一帯一路協力」なのか?
李首相はフォーラムで以下のように発言した。
「今回、およそ1000人の日本の企業家が訪中し、フォーラムの最後には合わせて52の文書に署名し、その金額は約180億ドル余りに達する見込みだ」
この7年の間、中米、中独、中韓などは様々な協定文書や契約書に署名。中日間だけ、こうした動きがほとんどなかった。安倍氏の今回の訪中によって、両国の経済交流は改めて正常な軌道に乗ったわけだ。
ただし、中国国内市場というより、今回の重点は「第三国での協力」。「第三国市場協力」という言葉はなかなか理解しにくいが、中国の多くのメディアは、ずばり「一帯一路協力」と受け止めたようだ。その構想を後押しするために中国が設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本がいまだに加盟していないことなどを、メディアは多く触れなかったが。
「一帯一路」を提起した2013年以降、中国は様々な場で、その構想を唱導してきたが、日本政府の反応は芳しくなかった。
協力に迷っていた日本企業
安倍首相訪中に際して、「第三国市場協力」、つまり事実上の「一帯一路協力」の主体は企業に託される形になった。だが、少なからぬ在中国の日本企業は、中国のどの企業と、どのように協力すべきか、かなり迷っていたのが実情だ。
『財新ネット』の報道によると、かつて中信証券国際有限公司の理事長を務め、現在は清華大学産業発展・環境整備センター執行理事の徳地立人氏は、次のように指摘したという。
「結局のところ、(例えば「第三国市場協力」などの)このような経済活動の実行は、最終的には企業が自ら判断するものだ」
徳地氏によれば、彼が中信在職中、東南アジア、アフリカ、南米などで中国企業が行なったプロジェクトの実地調査を進めたところ、
「中国企業と日本企業では、プロジェクトの進め方が異なっていることに気が付いた」
という。
具体的には、どう異なるか。
「中国と日本企業の管理方法や文化が違う。技術をどう活用するかという考え方も違い、そもそも、言葉によるコミュニケーション自体にも障害がある」
「誰がプロジェクトをけん引して、どのように行ない、どのように分業するのか、さらにプロジェクト完成後の利益をどのように配分するのか等々、協力メカニズムを構築するのは極めて難しかった」
中日両国企業の強みなどを分析したみずほ銀行のレポート(2017年末発表)によると、中国企業はグローバルな華僑ネットワーク、政府の資金援助および大規模な製造業を擁する強みを持つ一方、日本企業は、比較的早くに海外市場に進出したことをはじめ、ブランド力、民間金融機関の豊富な海外経験、多くの分野での技術力、経験などで優位性を発揮している。
中日企業の違いは前々から指摘されていたことながら、こうした双方の強み、持ち味をどう折り合わせて、お互いにどのように「協力メカニズム」を作っていくか――。「第三国市場協力」開始という新たな局面によって、こうした課題が大きく突きつけられることになった。
(在北京ジャーナリスト 陳言)