「自分でパソコンを打つことはありません」――。サイバーセキュリティ基本法改正案を担当する桜田義孝五輪相のこの発言がきっかけで、日本のインターネット上では台湾・行政院(内閣)のデジタル総括政務委員に注目が集まっている。
両者のIT(情報技術)リテラシーを比較し、「かくして日本はまた周回遅れになる」とあきれる声が上がっている。
海外メディアも苦言
冒頭の発言は、2018年11月14日の国会答弁で飛び出した。
衆院内閣委員会で立憲民主党の今井雅人議員が「自分でパソコンはお使いになっていますか?」と質問すると、桜田氏は「そういうことは、常に従業員、あるいは秘書に指示することでやっております。自分でパソコンを打つということはありません」などと回答。これが国内外で話題になった。
15日付の米ニューヨーク・タイムズ紙(ウェブ版)が、「コンピューターを使わない人も多いだろうが、その多くは国家のサイバーセキュリティを担当してはいないだろう。でも、そういう人が実際にいるのだ」と皮肉を飛ばすほどで、ネット上でも桜田氏の資質を問う声が相次いだ。
一方で、桜田氏と近い立場ながら十分すぎる資質を持っているとして話題の人物がいる。台湾・行政院でデジタル総括政務委員を務める唐鳳氏(37)だ。
天才プログラマーの顔
唐氏は、IT分野に精通した「天才プログラマー」として知られる。
行政院の公式サイトや現地メディアの報道によれば、16歳でIT企業の技術責任者となり、米アップルでは顧問を務めた。同社では人工知能(AI)を用いた音声アシスタント「Siri(シリ)」の開発に携わったという。24歳の時には性別適合手術を受けて男性から女性となった。
その手腕を買われ、16年10月に史上最年少の35歳で行政院に入閣し、デジタル総括政務委員(無任所大臣)に就任。現在も同委員を担当し、新しい情報技術の調査や政府のオンラインプラットフォームの拡充などを進めている。
日本のツイッターユーザーの間では、桜田氏と唐氏を比較した投稿が目立ち、
「かくして日本はまた周回遅れになる」
「学歴や経歴のみではなく、本人の専門性と能力に目を向けるべし」
「ま、大臣というのはマネジメント職だからね。天才プログラマーだからといって、必ずしもマネジメント出来るかと言ったらそうでもない」
といった意見が投げかけられている。