なぜスポーツ各紙は、稀勢の里を「引退危機」と報じないのか

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元相撲担当記者の見立ては

   スポーツ紙で6年間、大相撲担当をしてきた記者からみて、この状況でどのスポーツ紙も引退危機を報じないということは違和感を覚える。8場所連続の休場明けの先場所は、「序盤に負けが込むようならば引退も」との論調が主だったスポーツ紙が、ここにきて一転した。

   先場所は体調が危ぶまれる中、初日から5連勝をマークして序盤を乗り切った。上位陣と対戦する終盤戦に星を落としたが、最低条件とされる二桁勝利を挙げたことで一度は引退の危機を乗り切った。これで引退の危機が完全に払しょくされたかといえば、そうではないだろう。

   初日、2日目の相撲を見る限り、事態は先場所よりも深刻である。だが、なぜスポーツ紙は引退の危機に触れないのか。おそらく、取材をしている現場の記者が、稀勢の里が今場所休場しても引退はないという感触を得ているのだろう。何かしらの「ウラ」を取っている可能性も考えられる。

   通常、横綱の引退問題が浮上した場合、記者は横綱の師匠である親方、横綱審議委員会、部屋の後援会関係者らを取材する。今回もすでにそのあたりは取材済であろう。これら関係者を当たった結果、休場=引退には結びつかなかったと考えられる。先場所、10勝を挙げたことで、引退問題は一度リセットされたということなのかもしれない。

   今場所は白鵬、鶴竜の2横綱が休場し、一人横綱の稀勢の里が土俵を守ってきている。稀勢の里の休場危機が、引退危機に発展するかは分からないが、稀勢の里が休場の危機にあることはだけは事実である。

(J-CASTニュ-ス編集部 木村直樹)

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