韓国のアイドルグループ「防弾少年団(BTS)」の「ミュージックステーション」(Mステ、テレビ朝日)への出演が取りやめになった問題を、元徴用工が起こした訴訟の韓国最高裁判決と結びつける論調が韓国メディアで広がっている。
発端は、メンバーの1人が原爆投下の写真がプリントされているTシャツを着ていたことだ。だが、今回の出演中止は冷え込んだ日韓関係から波及した「韓国叩き」の一環だというのだ。
判決前から「アサ芸」などが報道
「原爆Tシャツ」着用は17年の出来事だったが、日本でもBTS人気が高まり「紅白内定」報道が出たことで、18年10月中旬にネット上で問題視する動きが相次いだ。この動きをアサヒ芸能がウェブサイト「アサ芸プラス」で報じ、夕刊フジや東京スポーツといった夕刊紙も追随。批判が広がり、「Mステ」出演中止につながった。「Mステ」ウェブサイトでは、その理由を
「番組としてその(編注:「原爆Tシャツ」の)着用の意図をお尋ねするなど、所属レコード会社と協議を進めてまいりましたが、当社として総合的に判断した結果」
だと説明している。
出演中止を発表したのが11月8日で、元徴用工をめぐる判決が出たのが10月30日。一方、上記のアサ芸、夕フジ、東スポの第一報はいずれも判決前に公開されている。「火に油を注いだ」可能性はあるが、必ずしも元徴用工問題と直結しているとは言い難い。にもかかわらず時期が近かったこともあって、韓国メディアではこの2つが結び付けられて報じられている。
「強制徴用賠償判決と関連した日本の韓国叩き」と解説
東亜日報は11月10日
「日本の『韓国叩き』が政治外交分野を越えて、韓流など文化コンテンツに至るまでの雰囲気」
「強制徴用賠償判決と関連した日本の韓国叩きはますます加速している」
だと指摘。翌11月11日には、聯合ニューステレビが
「日本企業に対する韓国の最高裁判所の徴用賠償判決と、これに対する日本政府の強硬対応方針が影響を及ぼしたという観測も少なくない」
と指摘した。
同日付で「BTS議論に映った韓日関係の苦い風景」と題して社説に取り上げたのは、ハンギョレ新聞だ。
ハンギョレ社説、出演中止は「世界中に日本の不法植民地支配の問題を喚起」
社説では、
「最高裁の『強制徴用判決』後、さらに離れた韓国と日本の関係の『現住所』を表わしたようで苦々しい」
と説き、Tシャツのデザインについては
「人類の悲劇的な原爆投下の写真を使って、日本の敗戦を表現したのは、明らかに適切ではない」
と批判。ただ、これは「反日」を意図したものではないし、それを着たBTSメンバーにも責任はないとした。1年以上前の出来事が蒸し返されたことには
「不寛容極まりないこと」
と非難し、Mステに続いて日本のテレビでBTSの出演キャンセルの動きが広まりつつあることについては
「このような対応は、世界中に日本の不法植民地支配の問題を喚起するだけだ」
と反発している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)