「ポイント還元」政策の中途半端 一石二鳥のはずが「二兎を追う者は~」の危険が

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   景気対策とキャッシュレス化。政府の狙いは、「二鳥」となるか「二兎」となるのか――。

   政府は2019年10月に消費税率を10%に引き上げる際、現金を使わず、クレジットカードなどで支払う「キャッシュレス決済」で買い物をすれば、増税分の2%をポイントで還元する制度を導入する計画だ。2014年4月に消費税率を5%から8%へ引き上げた後、個人消費が冷え込んだことから、景気の腰折れを防ごうという狙い。

   だが対象店舗や還元する期間が限定的などの問題が指摘されており、既に小売店などからは批判が上がっている。

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手数料引き下げに業界から不満も

   ポイント還元制度は、2%分のポイントを、クレジットカード会社などを通じて政府が消費者に付与する仕組みで、ポイントは次回以降の買い物で使える。実施期間は半年~1年程度で検討している。消費の冷え込みを避けるには効果がありそうに見えるが、対象とする店舗は中小零細の小売りや飲食、宿泊業など消費者向けのサービスを行う店に限定する見通しだ。

   中小零細の店舗で消費が落ちないための取り組みだとされるが、そもそも中小零細企業にはキャッシュレス決済に対応していない店が多い。この制度を使うためには、新たにカードの読み取り機などの端末を導入するなど重いコストがかかる。

   さらに、キャッシュレス決済を始めた場合、カード会社に手数料を支払わなければならない。手数料は規模や業種によってさまざまだが、3%超が多いとされ、たとえポイント還元制度によって売り上げが伸びたとしても、利益は小さくなる可能性が高い。

   このため政府は店舗が端末を導入した場合は補助金を出すことも検討しているほか、カード会社に対し、手数料を3%程度に抑えることも要請する考えだ。しかし、商店街の中には「日々の利用客はお年寄りが多く、その多くは八百屋や魚屋での買い物にカードなんか使わない」という批判の声が圧倒的。カード会社からも「手数料は店舗の信用力など理由があって設定しており、政府から一方的に下げろと言われるのは納得できない」との反発も出ている。

同じコンビニでも、直営とFCで違いが...?

   「中小零細」の線引きも問題がある。例えばコンビニは、タバコ屋や酒屋が転換するなど中小零細業者がFC加盟店となっている店と、大企業である直営店が混在する。大手3チェーンの約5万店のうち98%がFC加盟店で、直営は全国で1000店ほどというが、利用する消費者には同じで、2%還元がある店とない店があれば混乱は必至だ。同様に、同じファッションビルやモールのなかで、還元がある店とない店に分かれることも考えられる。

   こうした問題を考えると、駆け込み消費と反動減という増税前後の消費のブレを均すという目的にどこまで効果があるのか、まして新たな混乱を生まないのか、疑問視する声が強まっている。

   さらに問題をややこしくしているのが、政府の「もう一つの狙い」だ。ポイント還元制度を導入することで、世界的に遅れている日本のキャッシュレス化を広めようというのだ。キャッシュレス決済の割合は韓国で約9割に上るほか、イギリスやカナダでは5割超、米国でも4割を超えているのに対し、日本では2割にも届かない状況だからだ。

   政府は世界的なキャッシュレス化の中で日本が遅れをとることを恐れているほか、キャッシュレス化は新産業創出につながり、経済効果が大きいとして、その割合を2025年までに4割に引き上げることを目指している。だが、現実には超高齢化でカードを使わないお年寄りの比率が大きいことや、治安が良く現金を使っても安心なことなどから、なかなか普及が進んでいないのだ。

   韓国でキャッシュレス決済が普及しているのは、キャッシュレス決済をした場合、所得税を控除するなどの取り組みをしていることが大きいとされる。カード業界関係者からは「韓国のように減税を組み合わせて国ぐるみで進めるならいいが、消費増税をきっかけに『一石二鳥』を狙う日本のやり方は中途半端ではないか」との声も出ている。

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