結果的に「デニー寄り」になってしまう問題
ここで琉球新報の滝本匠東京報道部長が挙げた今後の課題は、大きく2つ。ひとつが、見出しの表現上の問題だ。「偽 候補者関与はうそ」という見出しの表現は、本来は遠山氏のツイートが「偽」の意味だが、「玉城氏の関与がうそ」だとも読める。さらに滝本氏は、
「やはり『偽』と断定するのは強い言葉なので、反発、ハレーションもある」
として、白黒つけない形での事実認定も課題になるとの見方を示した。
もうひとつが、公平性の問題だ。琉球新報のファクトチェック記事には、候補者の実名が登場せず、「特定の知事候補者」といった表現にとどまっている。選挙報道としての公平性に配慮した結果だが、それが
「記事が誰のことを言っているのかよく分からない記事になって、全く記事として合格点が与えられないような記事。非常に読者にとっても不親切」(滝本氏)
ということにつながった。
FIJのガイドラインでは、
「特定の主義主張や党派・集団等に対する擁護や批判を目的とせず、公正な基準と証拠に基づいて、事実に関する真実性・正確性の検証に徹する」
ことを求めており、琉球新報もこれに従っている。だが、実際にファクトチェックを進めていくと
「デマ・中傷(による被害)が多いのは玉城デニーさんが9割。結局、選んでいくと玉城デニーさん寄りになってしまう」(滝本氏)
というのが実情だ。
琉球新報としては、
「普天間飛行場は何もないところに作った」
「沖縄は基地でメシ食っている」
といった、「沖縄フェイク」と呼ばれる、根拠がない情報に対抗するために始めたファクトチェックの取り組みだが、取り上げられる記事の数だけを比べると、玉城陣営を応援していると誤解される可能性もある。そういった中で、いかに公平性を可視化していくかも課題になりそうだ。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)