「少額」賞金のためにリスク犯すか
前出の関係者は「競走馬はかなり神経質です。よほど競走馬の扱いに慣れた人間でないと、近付くことは難しいでしょう。まして薬物を注入するなんてことは、常識では考えられないですね」と話した。
競馬はレースによって賞金がそれぞれ設定され、競走馬の順位に応じてジョッキーや厩舎関係者が賞金を得る。仮に内部の関係者による犯行ならば、この賞金が目当てで犯行に及んだと推測されるが、地方競馬の場合、中央に比べて賞金はごく少額。7月のレースで禁止薬物が検出された際、岩手競馬組合がジョッキーなどから返還を求めたのは、レース賞金を含む11万7千円ほどだった。
また、前出の関係者は部外者が競走馬に禁止薬物を注入するメリットがないと指摘した上で、「考えられるのは、その厩舎関係者に対する怨念。禁止薬物の使用が発覚すれば何らかのペナルティーが与えられるわけですから。怨念以外は考えられませんね」と、犯行の動機になりうる心情について言及した。
今事件に関して謎が深まる一方だが、過去、日本の競馬会で禁止薬物が検出された大きな事件として、2006年の凱旋門賞でのディープインパクト事件が挙げられる。フランスのロンシャン競馬場で行われた同レース後、理化学検査でディープインパクトの体内から禁止薬物「イプラトロピウム」が検出され、同馬が失格処分を受けた。
これに伴い、ディープインパクトを管理する池江泰郎調教師に15000ユーロ(当時の換金レートで約227万円)の制裁金が科され、日本中央競馬会(JRA)は同馬に同行した日本人開業獣医師に対し、JRA診療施設の貸し付けを2006年12月4日から6カ月間停止する処分を行った。