解説者が「顔色が悪いですね」
記者がスポーツ紙で陸上を担当していた当時、取材現場で何度も増田さんを拝見した。手にしていたB5ノートにはびっしり文字が詰まっており、無名の選手にも真摯に取材していた姿が印象的だった。
陸上界でこれほどの実績を持つ増田さんが、取材する側に立ち、選手のプライベートな情報を事細かくリポートするのは、現役時代のある辛い思いがあったからという。
途中棄権と隣り合わせの激しい走りに、増田さんの家族はレースのたびに心配していた。あるレースの時に、解説者が増田さんの表情を見て解説者が「顔色が悪いですね」と放った一言で、祖母がとても心配したという。
増田さんがリポートする際に心がけていることは、選手の家族に心配をかけないこと。そのために選手の親にしっかりと取材をし、他の解説者とは異なるエピソードを引き出すのだという。
ただ、増田さんのトリビア解説が全面的に受け入れられるかといえば、そうでもない。2016年リオ五輪で女子5000メートル予選の模様をNHKで解説をした際に、出場している選手が、焼き鳥のねぎまのキーホルダーを大切に持っている理由(ネバーギブアップをかけて、ねぎーまっぷ)を紹介しようとした際に、実況のアナウンサーが割って入りスルーされたエピソードがある。
陸上だけでなく、ナレーターとしても活動の場を広げる増田さん。聞いている人に癒やしを与える「F分の1(1/f)ゆらぎ」の持ち主といわれ、朝の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK、2017年度上半期)でナレーターを務めたほどだ。
癒し系のトリビア解説者、増田さんの解説は人間味にあふれている。