岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
ユダヤ教徒襲撃でも消えないこの国の価値観

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トランプ大統領を非難していた容疑者

   事件のあったシナゴーグは、ユダヤの非営利難民支援団体「HIAS」と深く関わっていた。HIASは米国務省と連携し、難民移民の住居や医療や社会保障などさまざまな支援を行ってきた。

   1881年にユダヤ難民支援を目的に設立されたが、今は宗教、国籍、人種に関わらず、主にユダヤ人以外の移民難民を援助している。よりよい世界を築くために、他人に手を差し伸べることが、ユダヤの伝統・価値観であるとしている。

   今回の銃乱射事件のあと、ツイッターなどのSNSで、家族や本人がHIASの援助を受けたという感謝の声が多く寄せられている。

   事件の1週間前の安息日は、全米で移民難民のためのイベントが行われていた。

   現在、ホンジュラスなど中米から数千人の移民集団が、米国への移住を求めて北上している。トランプ氏は彼らを「侵略者(invader)」と呼び、「移民集団はとても危険だ」と述べた。米国入国を阻止するために、メキシコとの国境に1万人前後の実戦部隊を配備している。

   銃乱射事件のバウアーズ容疑者は、移民難民に対して「侵略者」というトランプ氏と同じ言葉を使っている。

   リベラル派は、「暴力や貧困から逃れてやってくる女性や子どもたち。彼らのどこが危険なのか。トランプが移民難民に対する恐怖や憎悪、憎しみ、民族間の対立を煽り、こうした事件が起きた」、「トランプの移民に対する非難や差別的な言動が、白人至上主義を擁護しやすい社会にしている」と、強く反発している。

   事件直後のトランプ氏のピッツバーグ訪問について、一部のユダヤ人団体は、「白人至上主義を非難するまで、トランプ氏を歓迎しない」と反対した。訪問時には、ユダヤ人なども含む反対デモが行われた。

   一方、トランプ支持者は、「今回の事件の原因がトランプ氏にあるわけがない」と激しく反発。トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏はユダヤ教徒で、トランプ氏の長女イヴァンカさんも結婚の際にユダヤ教に改宗していることや、同氏がイスラエル米大使館のエルサレム移転に動いたことなどをあげ、「マスコミも含めてリベラル派は、トランプに対する憎悪や怒りを無責任に煽っている」と主張する。

   中米からの移民集団については、「数千人単位で我々の国境を超えてくる集団は、侵略者以外の何者でもない」という声も強い。 SNSでの本人の発言によれば、バウアーズ容疑者はトランプ支持者ではない。

   「トランプはグローバリストで、ナショナリストではない」、「ユダヤ人がはびこるのを阻止するために、何もしていない」と非難している。

   バウアーズ容疑者にしてみれば、トランプ氏は移民やユダヤ人に対してまだまだ甘すぎるということらしい。

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