2018年10月31日に開かれた中国共産党政治局の会議は、国営の新華通信社によると、「中国経済は安定した中で変化が出てきて、経済の下降圧力が増大しており、一部の企業は経営難に直面している」として、厳しい中国経済の現状を認めた。
それを先取りして、10月1日の国慶節後、主に中国国内投資家向けの株式である「A株」は下落に次ぐ下落が始まり、上海証券指数は10月18日に2500の大台を割って以来、4年ぶりの最安値を更新した。2018年初めから今に至るまで、相場の下げ幅累計は2008年を除くと最大の年間下げ幅となっている。
4年ぶりの安値更新
A株を発行している上場企業の株価の惨状は目も当てられないほどだ。史上最高値と比べると、1018株の価格が8割以上下落し、株価が半分まで下落したのが3150株と、全体の88.66%にものぼる。
しかし、最も危険な時期はまだやってきていない。 中国経済に関するネガティブな見通しや資金チェーンの断絶、株式の質入れの続発は、株式取引の強制手じまいと株式下落が交錯する形で証券市場リスクを誘発し、さらに進めばシステム的な金融リスク生むことになるかもしれない。
繰り返される政府関係者の発言
10月19日、副首相の劉鶴をはじめとする4人の政府高官が株式大暴落に対し、やはり相変わらずの判断を示した。「中国経済はとても健全で、問題はあるものの大きなものではなく、株式市場の現在の下降状況は経済の基本面を反映したものではなく、投資家の自信不足に過ぎない。そのため、恐慌ムードに圧倒される必要はまるでなく、みなが自信をもてば、見通しは明るくなる」と語ったのだ。
これは長年繰り返されてきた発言だ。株式市場の高騰は中国経済の高速発展の証明であり、株式暴落は単なる民間投資家の自信不足あるいは「錯覚」の恐慌である、というのだ。
A株は極めて多くの方面で事実上、すでに中国で最も市場化された分野である。中国株式が時々刻々と実体経済と一致するわけではないものの、その意義からすると、やはり中国の現在の経済の姿をよく反映しているものといえる。
国家統計局のデータによれば、2018年1~8月の全国の一定規模以上(年間収益が2000万元以上)の工業企業の利潤総額は4兆4248億7000万元で、前年同期比16.2%増であった。そのため多くの公的研究機関は、「経済は実際にはそれほど悪くない」と表明した。
しかし、一定規模以上の工業企業のうち、国有持株企業の利潤総額は前年同期比26.7%増で、集団所有制企業の利潤総額は3.2%増、株式制企業の利潤総額は20.1%増、外国企業および香港・マカオ・台湾投資企業の利潤総額は7.6%増、私営企業の利潤総額は10%増であった。つまり、本当に利潤が増えた企業は国営企業だけで、彼らがこのデータを支えているのであり、外国企業や民営企業の成長は良い状況にはほど遠いということである。
招商銀行チーフエコノミスト・丁安華氏の研究論文によると、2018年1月~8月の工業企業利潤の成長速度は、実際にはマイナス8.1%であった。
世界貿易システムのなかで反中国勢力圏
国際的にも、米国との貿易戦争は持久戦であるのみならず、中国へのマイナスの影響は一部の官僚や政府側の学者が言うように「有限的」ではないということがますます明らかになっている。
2018年、中国が国慶節の長期休暇中、北米自由貿易協定(NAFTA)は米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)にとって代わられ、米トランプ大統領はこれを今まで米国が達成した最も重要な貿易協定の一つとまで言っている。欧米の大手メディアは一般的に、後者は事実上、米国が盟友に中国との貿易交渉を行うのを阻止する「毒薬」で、米国はこれにより世界貿易システムのなかで反中国勢力圏を築き上げようとしていると認識している。
さらに、同じ中国の長期休暇中、米国のペンス副大統領がハドソン研究所で行った意気込みたっぷりの対中国政策演説が中国ひいては世界を震撼させた。中国では、この演説は米中が「新冷戦」状態へと進んだことを象徴するものであると解読された。これが中国市場および投資家に与える心理的震撼は極めて顕著なものであった。
衝撃は単なる心理的なものにとどまらない。中国電気機械製品輸出入商会が10月16日にメディアに提供した資料は、中米貿易戦争が明らかに中国の電気機械輸出を抑制していることを示している。電気機械製品は一年を通して中国の対外貿易の大半を占めるが、主に民営企業が生産し、取り扱っているものだ。
A株暴落の背後には、企業全体の収益の低落、さらに米国が仕掛けた貿易戦争という脅威がある。
(在北京ジャーナリスト 陳言)