シリアの武装組織による拘束から解放されたフリージャーナリスト・安田純平さんが2018年11月2日、日本記者クラブで会見を開き、3年以上にわたる拘束中の出来事を語った。武装組織によって7月にウェブ公開された動画で、「私の名前はウマルです。韓国人です」と、名前と国籍を偽った理由も話している。
「ウマル」とはイスラム教徒に改宗したことで付けた名前というが、改宗しなければならなかった事情を述べ、また動画が撮影される以前は韓国人でなく「中国人と言っていた」時期もあることを明かしている。
「運動したかった」
監禁されていた3年4か月の間、安田さんはいくつかの収監施設を転々とさせられてきた。複数の囚人がいる施設にいたこともある。その中で武装組織側の考えについてこんな認識があった。
「報道されている日本人の人質であるということが施設内の他の囚人にバレると、他の囚人が出国した時に周囲に話すかもしれない。すると『インターネットやニュースで流れているあの人質があそこにいる』という情報が流れてしまうかもしれないので、周囲に対して私が日本人であるとか、私を特定できることは言ってはいけなかったと理解していた」
ある施設で安田さんが監禁されていた部屋は約1メートル×2メートルという狭さだった。物音を立てると「1分以内くらいで、盗み聞きするために身動きしたのだろうという理屈で、拷問を始めたり電気を消したりされた」といい、わずかに体を動かすこともままならなかった。
そこでハンガー・ストライキを始めた。1日2回の食事が提供されてきたが、「食事をとるとエネルギーになり、身動きしないときつくなってしまうので、もう食べないことにした」という。だが、それでも体を動かせないのは苦痛だった。これを解消するために申し出たのが、「イスラム教への改宗」だ。
「イスラム教徒になれば1日5回礼拝ができる。5回動ける。これまで1日2回、食事の時しか動けなかったが、イスラム教徒になることで5回追加できた。運動したかった」
改宗によって付けたイスラムの名前が、7月公開の動画で名乗った「ウマル」だ。施設内でもこの名で呼ばれていたとしている。
動画撮影時、「日付と名前と国籍、環境が悪い状態にあって助けてほしい、ということをすべて日本語で言え」と言われたという。だが、「なぜ日本語なんだと疑問だった。彼らは日本語がわからない。今までの動画は英語だった」ことから、このように考えたと明かした。