自民党の野田聖子・前総務相(58)が、女性初の衆院予算委員長として本格デビューし、議員や閣僚を「さん」付けで呼び、独自色を出した。「君」付けで呼ぶのが慣例とあってか、NHKや読売新聞など各メディアも報じた。
国会中継や報道を見た人からツイッターに賛否が寄せられるなか、かつて旧社会党や社民党のトップを務めた故・土井たか子さんを思い出す声も出ていた。衆院議長にも就任した重鎮で、議長時代は議員を「さん」付けし、「慣例にがんじがらめになっている国会を改革する手始め」と位置付けていた。しかし、それから25年後、またもや「さん付け」がニュースになってしまった。
「印象はいいよね」「どうもしっくりこない」
野田委員長は2018年11月1日、衆院予算委員会で質疑に立つ議員や閣僚を「さん」付けで呼んだ。「内閣総理大臣、安倍晋三さん」と、首相も「さん」付けだった。野田氏は委員会後、記者団に対し、一般社会では男女の別なく「さん」付けで呼び合うことが多い、として「その方が自然に呼べると思った」と説明した。
この動きについて、各メディアは「閣僚や議員を『さん』付けで呼ぶ野田聖子衆院予算委員長」(NHKウェブ版、1日)などの見出しで伝えた。読売新聞や朝日新聞なども報じている。
ツイッターでも注目され、
「これはいい。『~君』(略)にはかなり抵抗があった。『~さん』が当たり前だ」
「確かに君よりさん呼びの方が印象はいいよね」
という賛成派や、
「うーん、『君』の方がしっくり来るんですが」
「『内閣総理大臣安倍晋三さん』...どうもしっくりこない」
との違和感表明派から感想が寄せられた。なかには、
「どっちでも良い。そんな内容報道するより重要な事が山積してるはず!」
とメディア批判を展開する人も。
また、
「土井たか子も同じことやってたよなw」
など、土井たか子さんの名前に触れるツイートも目についた。
土井さんは「女性初の社会党委員長」「女性初の衆院議長」などを歴任した大物政治家だった。1969年に衆院初当選し、連続12期を務めて2005年の衆院選で落選、その後引退した。「おたかさん」の愛称で知られ、この間、1989年の参院選で自民党を過半数割れに追い込み、「山が動いた」の名言を残し、細川政権が誕生した1993年には衆院議長に就任した。のちに社民党党首も務めた。2014年9月、肺炎のため死去した。
「国会改革」の一環として取り組むが
土井さんは議長就任後、議場で議員を「さん」付けで呼んだ。首相指名の際も「細川護熙さん」だった。やはり当時、メディアが報じ、「議員呼び名『〇〇さん』 土井議長、さっそく独自色 『国民にわかる国会を』」(読売新聞、1993年8月7日付、東京本社版)などの見出しが躍った。
「さん」付けに込めた思いについては、たとえば、1997年1月17日付の朝日新聞掲載の対談(相手は羽田孜さん=故人)で語っており、土井さんは、
「私は議長になったからには、先例・慣例にがんじがらめになっている国会を改革しようと思った。手始めに議員を本会議で『〇〇君』ではく『〇〇さん』と呼びました」
と、国会改革の一環として位置付けていたことを明かしていた。
しかし、土井さんの議長就任から25年後の2018年11月、国会での議員の「さん」付けがまたもや「ニュース」になってしまった。土井さんが目指した「国会改革」は浸透しなかったようだ。
今回の野田委員長の「さん」付けをめぐる記者団とのやりとりの中では、「さん」付けで議員を呼んだ土井たか子・元衆院議長を意識したのか、との質問も出た。NHK報道によると、野田委員長は「特に意識はしていないが、『さん』付けが男女共通の呼称ではないか」と答えていた。