油圧機器メーカーKYBと建材メーカー川金ホールディングス(HD)などの免震・制振装置のデータ改ざん問題を受け、マンションの住民らに不安が広がっている。KYBなどは所有者らの同意を得た官公庁などの物件名を明らかにしているが、マンションなど民間の物件は明らかにしていないためだ。
しかし、問題となった免震・制振オイルダンパーが使われているのは20階以上の超高層マンション(タワーマンション)が中心で、14階程度の高層マンションでは免震・制振装置が使われないケースが多いという。自分の住むマンションが気になる場合は、管理組合などを通じて確認するのがよいだろう。
低層でも注意が必要なケースは
建設会社や関連機器メーカーで組織する「日本免震構造協会」によると、国内の免震建物は1995年の阪神大震災と2011年の東日本大震災をきっかけに採用が増え、2016年末で約4300棟の免震ビルがあるという。このうち約3割がマンションとみられる。
1981年の建築基準法の改正で「新耐震基準」が定められ、同年以降に建設された建物は震度7程度の地震でも倒壊しない構造になっているが、高層ビルは高層階ほど揺れが激しくなるため、揺れを抑える免震・制振装置を採用するケースが増えている。
しかし、オイルダンパーなどの免震・制振装置を設置するにはコストがかかるため、「設置するのは一般的に20階以上の超高層マンションに限られる」(大手建設会社)という。例えば14階程度の高層マンションは「地盤が強い場所であれば通常の耐震構造で十分との判断から、免震・制振装置がないものがほとんど」(同)という。
超高層マンションでも地盤が強い地域では免震・制振装置がないマンションがあり、逆に地盤が弱い地域では、低層マンションでも免震・制振装置を設けるケースがあるという。設置の有無は「地盤の強さや建物の高さなどを総合的に判断して決める」という。
関係者にも情報入りにくい
仮にマンション内でKYBなどの不適合品が見つかった場合でも、関係者によると「免震・制振装置は必ずしもオイルダンパーである必要はなく、他メーカーの製品で代用できる場合もある」という。KYBと子会社は約1万本のオイルダンパーの交換が必要とみられ、製造能力を現在の月産100本から4~5倍程度に引き上げる方針だが、交換作業は長期化が懸念されている。
免震・制振用のオイルダンパーはKYBと川金HDで国内シェアの約半数を占めるが、両社のオイルダンパー以外の免震・制振装置を採用すれば、交換作業は早期に完了する可能性はある。
この間、KYBの対応は後手に回り、調査・事実確認にも時間がかかっている模様で、「大規模高層ビルでさえ、正確な情報が入ってこない」(業界関係者)という。いずれにせよ、川金HDも含め、マンションはじめ対象物件の早期の情報公開が求められている。