バスケってこんなエンターテイメントの可能性を秘めているんだ!
これからはバスケが来る! いやもうキテるのか......!
僕は、完全に乗り遅れていた――。
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こんにちは。J-CASTニュース名誉編集長の山里亮太です。
今回の取材テーマは、2015年4月に発足した日本プロバスケットリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」。今、もっともチケットを取りにくいスポーツ興行のひとつです。
ことしで3シーズン目ですが、Bリーグ2017-2018 レギュラーシーズンの入場者数は、B1・B2合わせて240万人を超え、開幕1年目だった2016-17シーズンの214万人から大きく伸長しました。
僕は、中・高・大とバスケットボールをやっていましたが、これまでBリーグの試合は観たことがありませんでした。
Bリーグの何が、そんなに人をひきつけているのか。取材を進めるためにも、まずは試合を観ないと始まりません。
お邪魔したのは、千葉県船橋市に拠点を置く「千葉ジェッツ」です。Bリーグの中でも売上高・観客動員数ともにトップ。どれくらいすごいかというと、ことし8月に発表された8期の年間観客動員数(30試合)で15万5895名(前年比115%)。1試合あたりの平均観客動員数(30試合)は5196名(前年比115%)。毎回アリーナが満員になる。そんな人気ぶりです。
Bリーグの人気をけん引する「千葉ジェッツ」を中心に、Bリーグの魅力を探ります。
思っていたのと違う これがバスケの試合か?
(ここから山里編集長の試合観戦レポート)
2018年10月21日、千葉ジェッツvs.新潟アルビレックスBBの一戦へ。
船橋アリーナに到着すると同時に、老若男女いろんな世代のブースター(ファン)がいることに驚く。おじいちゃん、おばあちゃん世代からお父さん、お母さん、小さい子どもまで、みんな千葉ジェッツのチームカラー「赤」一色だ。
Bリーグのゲームは、開場、即試合というわけではない。ティップオフ(試合開始)の約1時間前から、パフォーマンスは始まる。とにかく、扉をくぐってからずっと盛り上がる仕掛けが散りばめられている。
まずは、子供たちや千葉ジェッツのチアリーダー「STAR JETS」によるダンスパフォーマンス。元気で激しいダンス、もう圧倒されまくり。盛り上がり方のレクチャーも丁寧に、レクチャーというよりもショーを観ていたら色々身についていたという感じで、早くもワクワクが止まらない。
照明が落ち、会場にはペンライトの灯が広がる......。なんだろうこの感じ、そうか、アイドルのライブの前の高揚感とそっくりだ!
たかぶる感情が噴火寸前の状態になる。
これは全力で盛り上がりたい! 膨れ上がったこの気持ち。まるでパンパンの風船に鋭く突き刺すように、次の瞬間、コートに映し出されるプロジェクションマッピング。もう、感情が吹き出して止まらない。そこに観客の歓声と流れる音楽が絡み合って盛り上がる。
会場がクラブ? 祭? とにかくみなさんがそれぞれ想像する「盛り上がっている場所」を想像してほしい。音楽のライブだったら1番聞きたい曲のイントロが流れたあの高揚感だ。
リアルタイムで、目の前のパフォーマンスや景色をSNSにアップしたら、「ラスベガス?」とコメントがきた。たしかに、そんな反応があってもおかしくないようなものがそこにはあった。
これでまだ試合が始まる前(しかも数十分の出来事)なのだから、これからどうなるんだろうとワクワク。
いよいよ選手たちの入場だ。照明、音楽、プシューと煙が吹き上がり、その中から選手が登場する。チアリーダーたちが作るアーチの間を走ってくる、目の前には炎の柱。
なんだ? これはバスケの試合か?? 元々バスケの試合って、バスケ好きが黙々と見るような感覚だったはず。これは、まったく思っていたのと違う。というか、こんなことができるのなら、バスケが野球やサッカー以上に、世の中に受け入れられるプロスポーツになるはずだ。いや、むしろ、これからのメディアにとっては、今までのスポーツ以上にフィットしてものすごい盛り上がりを見せるのでは?
全てのプレイに地鳴りのような歓声が響く
目の前で選手たちの練習が始まるが、試合前の練習さえもショーアップされていた。その都度どうやって応援していいかは、会場とチアのみんなが教えてくれるし、周りを見回すと老若男女のブースターが、全員笑顔で歓声を上げている。驚いたのが、孫の手を引くおばあちゃんが振り付きで応援している姿。それがまたいいんだ!
タイムアウトの度に登場するチアリーダー「STAR JETS」。やはり1秒も退屈させない精神がすごい。選手が倒れた後、モップをかけにくる方もショーアップされている。ここもまた感動した。
試合はやはりスピード感がある。攻撃になれば「GO! JETS!!」、相手チームにボールがわたれば「DEFENSE(ディフェンス)」と、会場が一体になって声を出す。本当に息つく暇はない。
一進一退、シーソーゲームのまま第2クオーターを終える。「千葉47-46新潟」の好ゲームだ。
ハーフタイムにはゲストの女性タレントが来てトーク、その中にもスポンサーさんの紹介などが入る。そうそう、スポンサーの件でいうと、フリースローにも驚く。
千葉ジェッツがフリースローを決めると、スポンサーさんの音楽が流れる。しかもそれにフリがつけられている、こんなスポーツ見たことない。やっぱりこれからの可能性は他のスポーツよりすごいと思う。
いよいよ後半戦だ。第3クオーターが始まる。まだまだ上がり続ける会場。次々決まるダンクシュートやスリーポイントシュート、次々かわすドリブル......、全てのプレイに地鳴りのような歓声が響く。とにかく楽しい。
対戦相手の新潟アルビレックスBBもこのアウェイでよくこんな素晴らしいパフォーマンスができるなぁ、と思いながらとにかく手を叩き、気づけば声を出してのめり込んでいた。
残すところあとわずかで、千葉ジェッツが8点リード。バスケにおいてこれは勝負あり! 最後は「千葉94-87新潟」で、千葉ジェッツの勝利! 会場が両チームに惜しみない拍手を送り、スタンディングオベーションに包まれる。
素直に身を委ねていたら、いつのまにか声を出して応援していた。この空間に入ったからには1秒だって退屈させない! アリーナにも選手たちにも、そんな想いが溢れていた。
終わってみれば、素晴らしいミュージカルでも見たかのような感じ。ここで冒頭の思いにつながる。
バスケってこんなエンターテイメントの可能性を秘めているんだ!
これからはバスケが来る! いやもうキテるのか......!
僕は、完全に乗り遅れていた――。
感動と、なんで今まで知らなかったのかという少しの後悔、今日観られてよかったという思いに包まれながら、拍手し続けた。
エンターテイメント性を追求した試合演出の魅力は十分すぎるほど体感した。お客さんがまた来たくなるのも納得だ。
なら、選手たちはこの盛り上がりをどう思っているのか? そしてこの「最強エンタメ」の仕組みを作った千葉ジェッツふなばしの代表は、これからチームをどうしていくのか? Bリーグの"内部"に迫りたい。
次回は、千葉ジェッツ、富樫勇樹選手に話を聞きました。11月6日(水)公開予定。お楽しみに。
(続く)