「未曽有の人手不足」と言われる昨今、活況が続く現在の転職市場では、20代の若手人材に対する需要も以前とは比べものにならないほどだ。とはいえ、転職を成功させるために十分な準備が必要であることは変わらない。企業が採用にあたって重視するポイントは年齢層によって異なるため、必要となる対策も年代によって自ずと違ってくる。連載第2回となる今回は、20代ならではの転職のポイントを紹介しよう。
20代の転職には何が必要なのか――。急成長中の転職エージェント「Spring転職エージェント」のトップ・板倉啓一郎氏はJ-CASTニュースの取材に、「素直さ」という言葉を使った。それは20代にとって、実績や能力よりも大事なのだという。
アデコ執行役員・人財紹介事業本部長で「Spring転職エージェント」最高責任者の板倉啓一郎氏
「痛いところを突かれても素直に聞けるか」
Spring転職エージェントは、世界最大の人材サービス会社アデコ(本社・スイス)の日本法人が運営する転職サービスだ。特長は2つある。1つは、業種でなく職種ごとに部門を分けて専門性を高め、他では得られない深い情報を提供する「職種別専門性」の体制を構築していること。もう1つは、担当を企業側と人材側に分けず、すべてのコンサルタントが企業と転職希望者どちらともやり取りする「360度式コンサルティング」という人材紹介手法をとっていることだ。
今年1月に発表された最新のオリコン「顧客満足度ランキング」転職エージェント部門で、Spring転職エージェントは堂々の1位に輝いた。その立役者となったのが、今回話を聞いた板倉氏。Spring転職エージェントのトップに就任した2014年からの4年で、売上高は約4倍増というめざましい実績を挙げている。
その板倉氏は、企業が採用活動にあたって重視するポイントとして「20代は成長の伸びしろがどれくらいあるか。そのためにベーシックな気質の部分や、ソフトスキルが重視される傾向があります」と話す。応募時点での経験や能力よりも、将来性を評価する、「ポテンシャル重視の採用」だ。
その人物が入社後にどれくらい成長するかを見極める判断材料は、企業によって異なる。ただ、板倉氏は、「どの企業にも共通する要素がひとつある」と言う。それが「素直さ」だ。
「特に若手の場合、『素直さ』は伸びるかどうかにかなり影響します。厳しいことを言われても素直に聞けるかどうか。痛いところを指摘された時、ムキになって反論するのではなく、素直に受け止めて前向きな反省につなげられるかどうか。それができる人は必ず伸びます」
「面接では、自分を良く見せるためにいいところばかりアピールしがちです。若手でも大きな業績を挙げている方はもちろんいますが、多くの方にとっては学びの時期であり、企業側もそれは分かっています。成功談ばかりでなく、失敗から何を学んだかを伝えることによって、将来の可能性を見せることができます」
素直に反省し成長につなげられるかどうかは、板倉氏いわく「理想と現実の自己一致」、つまり自分の現在地を客観的に見る力が重要とのことだ。
「若い方々の中には、空想の理想的な自己と現実の乖離が激しい方がいます。空想と現実の差が大きいと、その乖離にストレスや矛盾を感じて転職を繰り返すケースが多くなるでしょう。自己分析の結果、悪いところが浮き彫りになってもいい。認識できていればいいのです。一番怖いのは悪いところを認めない、あるいは人から指摘されても聞く耳を持たないこと。その人には何を言っても無駄だと周りも思って、誰も何も言わなくなります」