太平洋戦争中に日本本土の工場に動員されていた韓国人の元徴用工4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国の最高裁にあたる大法院は2018年10月30日、個人請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。
控訴審判決では新日鉄住金に対して1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支払うように命じており、今回の最高裁の判断で判決が確定する。日韓間の財産請求権の問題については、1965年の日韓請求権経済協力協定で「完全かつ最終的に解決済み」だというのが日本政府の立場。日本政府は、判決が日韓関係の「法的基盤を根本から覆すもの」だとして強く反発する一方で、韓国政府が言及したのは「今回の判決が、日韓関係に否定的な影響を及ぼさないように日韓両国が知恵を集める必要性」。国内世論と日韓関係との間で難しい判断を迫られそうだ。
「国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野」「国際法に照らしてあり得ない判断」
もともとこの損害賠償訴訟は1997年に日本で起こされたが、2003年に最高裁で原告側の敗訴が確定。そこで原告は05年に韓国で訴訟を起こし、1審と2審は日本での確定判決は韓国でも有効などとして原告が敗訴。しかし、12年に韓国の「最高裁」が「個人の賠償請求権は有効」だとしてソウル高裁に審理を差し戻し、13年の差し戻し高裁判決では原告が勝訴していた。徴用工問題をめぐって最高裁が日本企業に賠償を命じるのは初めて。
KBSなどによると、今回の最高裁判決では、
「原告が求める慰謝料請求権は、請求権協定の対象に含まれていないと見るのが妥当」
で、日本の裁判所による判決の効力は、韓国国内では効力を認めることはできない、という判断も示した。このまま韓国政府が何も対策を行わない場合は、敗訴した新日鉄住金側は資産差し押さえなどの強制執行を受ける可能性も出てくる。これに加えて、徴用工をめぐる訴訟は計15件ほど起こされており、今回の判決が影響する可能性もある。
河野太郎外相は、判決をうけ、
「日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって、極めて遺憾」
だとして、韓国側が「適切な措置」を行わない場合は
「日本企業の正当な経済活動の保護の観点からも、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然とした対応を講ずる考え」
だとする談話を出し、安倍晋三首相も衆院本会議での代表質問に対する答弁で
「国際法に照らしてあり得ない判断。日本政府としては毅然として対応していく」
と述べた。